第22話 パトラの戦い
機巧暦2139年12月・ギリシャ・パトラ
「榊原少将!! 申し訳ございません!! 我が軍勢の不利です!!」
「な、何!? どういうことだ!! 俺らは二十個師団なんだぞ!! 敵は僅か1万足らず」
「やはり民兵とガチガチの職業軍人とでは厳しすぎます」
統監府から出撃した榊原軍はギリシャのカラマタ付近に到着すると上陸してくる敵を次々と撃破していった。しかし敵の艦砲射撃が始まると形勢は逆転し敗北を重ねる。
さらにオスマン軍は先陣に使い捨ての傭兵部隊を突撃させ、その後に正規軍を突撃させた。水際作戦で榊原軍が撃破していたのはオスマンの傭兵部隊に過ぎなかったのだ・・・・・・・・幾らか近代化した軍勢では歴戦のオスマン軍と戦うのは難しかった。
「パトラに退くぞ!! このまま壊滅すれば今まで積み重ねてきたことが水の泡だ!!」
「わかりました」
統監府に榊原軍がカラマタの北方パトラに撤退した二日後にオスマン艦隊が欧州本部艦隊の奇襲を受け壊滅した。それを受け榊原軍は再度カラマタに軍を出撃させた。さらに欧州本部艦隊はギリシャのカラマタ西方から輸送艦で北畠顕康が率いる六個大隊《6千》の兵力を上陸させ、オスマン軍が進駐するアテネに向かった。
ーーーーギリシャ・カラマタ湾
「只今、北畠軍が西海岸から上陸しました。これで榊原軍と北畠軍で挟撃できるでしょう」
「うむ。アナトリア方面はどうか?」
「アナトリア方面には劉宋がコンヤを攻め落とし拠点を確保しました。さらに劉徹がカイセリを攻略中とのことです」
カラマタ湾海戦で勝利した欧州本部艦隊はそのままカラマタ湾内に突入し逃げ遅れた残存艦の殲滅を行っていた。旗艦・金剛はカラマタ湾に投錨していた。
「久遠柚希が来なくても片がついてしまったな・・・・・・・」
「新田中将、楠木中将から無線が入っています」
「うむ」
(新田中将、申し訳ございません。久遠少将の取り込みに失敗致しました・・・・・・・・)
「仕方ないな」
無線機からは楠木中将の声が聞こえる。
(久遠少将はもはや我が敵と言っても過言はありません。すでに我らの意図を察しているようでして反感を抱いているようでした)
「そうか」
(お、驚かないのですね)
「久遠柚希が我らの意図に気付かない愚か者でもあるまい。最初からある程度ほ気付いていたはずだ。奴も金が欲しさで我らに近づいたのだろう」
(・・・・・・・・・・そ、それでどう致します?)
「海戦はオスマン帝国の敗北に終わったから心配することはない。このまま帰ってこい。久遠少将には素敵なプレゼントを贈ってやるつもりだ」
(素敵なプレゼント?)
楠木中将は意味分からないと言った反応だった。新田中将は構わず無線機を切った。
「イギリス連合王国のアルフレート=フォン=ドルシア中将に無線で伝えてくれ。久遠柚希を始末しろとな。やり方は問わない」
「わかりました」
配下の者を呼ぶと新田中将はそう言った。




