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機巧魔術師の異聞奇譚  作者: 桜木紫苑
序章 異世界召喚
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第6話 北方戦役

機巧暦2137年11月・スウェーデン



北方戦役はロシア=ソビエト連邦のオスマン帝国領への南下政策や共産主義者の拡散を牽制するために行われたものだ。俺はわずか10人余りにしかいない偵察部隊の一人として参加していた。当初、参謀本部としてはスウェーデンやノルウェー方面には敵はいないと判断していた。そのため偵察部隊の護衛はつけなかった。



さらに後から続く先鋒部隊も偵察部隊とかなり離れていてもし偵察部隊が敵に襲撃された場合、確実に間に合わない。そのことは参謀本部でも指摘があったが結局スルーされた。

 




ーーーーそして懸念されていたことが現実のものとなる。




旧東プロイセンに差し掛かった時、偵察部隊は目の前に50機余りの複葉機を発見。退避しようとした瞬間、複葉機から機銃掃射を受けてしまう。



「退避せよ!! 後ろに退くぞ!!」



「ギャァァァァァァァ」



「隊長ォォォォォ 後ろに回りこまれてます!

!」



「グハッ!!」



偵察部隊は敵の複葉機と魔導航空部隊による挟撃を受けたのだ。必死に銃剣を振るい抵抗するも次々と撃ち落とされていった。



この時、攻撃してきたのは連邦国軍が臨時で編成した警戒部隊だった。複葉機50機と魔導士200名という大所帯。それに対して偵察部隊はわずか10名・・・・・



「隊長がやられた!!」



「くっ ここまでか・・・・・」



仲間の中にはせめて一太刀と手榴弾を片手に特攻する者もいたが機銃で蜂の巣にされた。ちなみにその頃、俺は雲の狭間に身を隠していた。攻撃が止むまで隠れていろとの隊長の命令だった。





クッソ 何も出来ないのか・・・・・!! 隊長・・・・・・





何も出来ない悔しさに押しつぶされつつ、俺は銃剣を構えると低空飛行していた一機の複葉機に目をつけ狙いを定めた・・・・・・雲の狭間から急降下で奇襲を仕掛ける。思いも寄らない方角から攻撃を受けた複葉機は一瞬で撃ち落とされた。



「このクソガキがァァァァァ!!」



こちらに気付いた魔導士が鬼の形相で向かってくる。






「させるかよ!!」





ゴキッ!!





背後に回り込み帝国式体術で頸椎をへし折った。






「ハァ ハァ ハァ・・・・・」






偵察部隊はすでに俺を除いて全滅していた。敵は俺の元に殺到した。





「あの野郎が・・・・・・1人じゃなくて大勢でやれ!!」



「おォォォォォォォ」



「小僧 覚悟しやがれ!!」



10名余りが一斉に襲い掛かってくる。こちらの銃剣が弾切れのため格闘戦でやるしかなかった・・・・・・・





「1つ!!」





ブシャァァァ






「2つ!!」


  




グサッ!!





「ハァハァハァ・・・・3つ!!」





ゴキッ!!





気付けば俺の身体は満身創痍となっていて腹に2発、腕に1発、ふくらはぎに2発の銃弾を受けていた。あちらこちらから血が噴き出していた。いつ死んでもおかしくない状況だった。意識が朦朧としてくる。



前へ突き出した右手の平から放射状に深紅の花が咲く。深紅の花は徐々にデカくなり俺の身体を半分覆う。



「アハハ そんなので銃弾を防げるわけねぇだろ!」 



「防御魔法陣は弓矢や剣に対してでしか効果ないんだよ! 馬鹿か!?」



「いや・・・・・なんか変だぞ」



「なに?」



深紅の盾は2重、3重と展開していき最終的に7枚重ねの盾となった。



「防御魔法陣は1枚しか展開できないはず・・・・・それが7枚。警戒すべきです!!」



「そんなもんは関係ねぇ! てェェェェェェ!!」 



「「「おォォォォ!!!」」」」



放たれた無数の銃弾が俺を取り囲む。どさくさに紛れて手榴弾も投げてくる。さらに複葉機からも機銃掃射してくる。







しかしーーー






ガキンッ! バキッ! ガキンッ! 





「なっ・・・・・・?」





「効かない・・・・だと?」






「構うな!! 撃ちまくれ!!」






ガキンッ! ガキンッ! ズドォォォォン!!





手榴弾が命中し辺りが黒煙に包まれる。






「この程度か?」





「むむむ・・・・・・」



「コイツ・・・・・」



黒煙を手で払うと俺は目を細めるてそう言った。




ヤベぇ・・・・スゲェ防御力だぜ!!




敵よりも俺の方が驚愕していた。もちろん敵は絶望的な表情で俺を見ていた。しかしノーダメージというわけではなく一枚目の深紅の盾には亀裂が入り電気がショートしたようにバチバチと音を鳴らしていた。



「・・・・・・・・」



「・・・・・・化け物だ」



「効かないってコイツ・・・・既に死んでるんじゃねぇのか」



敵からしたら今の俺の姿は化け物レベルで恐ろしいはずだ。血塗れの顔に殺気がほとばしる瞳、深紅の盾の影響で周囲は不気味な紅色に包まれている。







そしてーーーー



「ユズキ准尉を助けろォォォォ!!」



「周りの敵には目もくれるな!! ユズキ准尉を助けるのが優先だ!!」



「「「おォォォォォ!!」」」



偵察部隊の後ろを飛行していた先遣部隊が到着する。時間稼ぎが成功したのだ。その後、乱戦の結果ギリギリで敵部隊を撤退に追いやることに成功する。乱戦が終わる頃には深紅の盾も消滅していた。





「終わったか・・・・・・フッ」





そこで俺は意識を失った。後から聞いた話だが意識をなくし急降下で落下する俺を地面ギリギリで食い止めたのが後の副官となるグレイスだった。その後、東部防衛戦、港湾奪還戦で防御力の高さを遺憾なく発揮した。

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