第4話 不穏な気配
機巧暦2139年12月・ドイツ帝国ブレーメン
「まずは新領主のご就任おめでとうございます」
「ああ・・・・・・・あ、ありがとう」
色々と多忙な時期に俺は西プロイスの有力者から祝いの言葉を貰った。
「ユズキ様は法律を整備していると聞きましたが、これは本当ですか?」
「ああ法律がなければブレーメンの統治はできないからな」
「法律を整備するよりも先にやらなければならない事がございます。どうかそちらの方を優先してくださればと思います」
有力者はそう言うと深々と頭を下げた。
「法律は最も大切なモノ、法律より優先しなければならないことなど思いつかないが?」
隣にいたグレイスやシャルロット王女らが頷く。
「ブレーメンの地を栄えさせたいのであれば西プロイセンを平定すべきです。今の西プロイセンは南郡、西郡、東郡にバラバラになっています。それぞれ有力貴族が好き勝手やっていましてとても平和な状況ではありません」
「貴方は何かを勘違いしているが、俺はブレーメンの領主であって西プロイセンの領主ではない。あまり首を突っ込みたくないのだ。わかるであろう?」
「確かに仰る通りです。しかし西プロイセンの有力貴族は要地であるブレーメンを虎視眈々と狙っております。有力貴族を征さずしてブレーメンの平和はありません。下手すればブレーメンを占領され敵軍は次は帝都ベルリンを狙うでしょう」
「・・・・・・・・・・・わ、わかった。しかし貴方の言葉を信じるわけにはいかないな。こちらでも調べてみて黒であれば征伐しよう」
「ご検討下さい」
有力者はそう言うと執務室を出ていった。
「少将どうしますか?」
「一応、事実確認は必要だろうから南郡、東郡、西郡の城に内偵するしかないな。内偵の準備をしてくれ」
「わかりました」
こうして南郡、東郡、西郡の有力貴族がいる城にスパイが送り込まれた。内偵する期間は1週間、何かあれば無線で連絡となった。