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機巧魔術師の異聞奇譚  作者: 桜木紫苑
序章 異世界召喚
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第5話 休暇

機巧暦2139年9月・ドイツ帝国帝都ベルリン



「え? 休暇ですか?」



「うむ。まあ私やグレイスも休暇をもらっているのだよ」



参謀本部の中庭で俺はレイシアからそう言われた。



「こんな状況で休暇なんか・・・・・」



「参謀本部としては作戦は決まったが各部隊の配置場所が決まってないから一週間程度の時間が欲しいと言われてな。1週間の間、我々の実働部隊は特にやることがないから特別休暇をやると言われたのだよ」



「・・・・・・・」



「君は何か予定でもあるか?」



「いや 特に・・・・・」



「ならぱ私とデートでもどうかね?」



「はっ? 今なんと・・・・?」



「何度も言わせるな。デートだ」



レイシアはぶっきらぼうにそう言った。頬と耳が真っ赤になっている。



「少将・・・・・・俺には彼女がいるんだ。デートは無理だ」



「君に彼女がいるだ・・・・と? 君は女性よりも男性にモテそうだがな」



たしかに・・・・・・否定は出来ない。異世界に来てから銀髪を伸ばしに伸ばした結果、俺を女性と勘違いした野郎が群がることが多くなった。まあ当たり前だか殆どが下心丸出しだ。ラブレターも毎日のようにポストに入ってる。



「この帝国は一夫多妻制が普通だ。愛妾の1人や2人いないと社交の場で恥を晒すハメになるぞ?」



「それって・・・・・むっぐ!?」



「それ以上は言うな。それと明日の10時にベルリン駅で集合だ。遅れるなよ?」



その先を言おうとした途端に口を塞がれた。



そして結局デートすることになってしまった・・・・・横暴すぎる!!



まあ立場上、断れるはずも無かった。断れば作戦行動や出世する上で支障をきたす可能性がデカかった。





翌日・ベルリン駅ーーーーーーー



「ユズキ、待たせたかな?」



「いえ、俺も今着いたばかりで」



「彼女は大丈夫かね? 説得に苦戦したのではないのかね?」



「最初はムッとしていましたがなんとか説得出来ました」



「そうか。さて、どうかな? 私の休日の装いは」



レイシアはそう言うとその場で全身がよく見えるように一回転した。



膝下くらいの長めの黒いワンピースの胸元や袖、裾には銀色に輝くリボンが付けられている。いつもポニーテールにしている紅髪は結っておらず後ろに下ろしている。



美しい・・・・・・・幼馴染みの友那もお淑やかで美しいが無邪気さが残っている。でもレイシアは大人の女性の美しさだ。美しいだけでなく触れれば火傷しそうなオーラを持ち合わせている。





男を魔道に堕とす淫魔ーーーーといったところか・・・・・





「・・・・・・・っ」



「フッ その目を見る限り、感想を聞くまでもないな。一つ言うが私に惚れると火傷するゾ」



「惚れるもんか! 俺と少将は師弟の関係だ。それ以上でもないしそれ以下でもない」



「アハハ、照れるな少年よ。目移りばかりしていては彼女とやらに愛想尽かされるぞ」



・・・・・まったく、なんならデートに誘うなよ。



「お返しとは言ってはなんだが、君の恰好も中々いいぞ。腰に吊している軍刀といい具合に合っている」



「あ、ありがとうございます」



黒いロングコートに腰のベルトには元帥刀を吊している。



「さぁ、喫茶店でコーヒーでも飲みながら語ろうじゃないか」



そう言うとレイシアは俺の手を引いた。







ーーーー喫茶店



「マスター いつものを頼む」



「お久しぶりですね。やはり軍務が忙しいのかな?」



「まあ それなりにな。ああこの者にもお願いするよ」



「わかりました」



レイシアは喫茶店のマスターにそう言うとカウンター席に座った。俺も隣に座る。



「ここは私の父の行きつけでね。私も合間を縫ってよく来ている。まあ最近は忙しいから来れなかったがな」



昼間なこともあって客はまばらだだった。



「お待たせしました」



「ありがたい」



「ありがとうございます・・・・・・え?」



二人分のコーヒーが置かれた。そして何故か俺だけ生クリームがたっぷり乗ったパンケーキが出された。



「これって・・・・・・」



「アハハ 僕からの贈り物ですよ。不死身の英雄グレイゴースト」



マスターは笑ってそう言った。






グレイゴースト《灰色の亡霊》ーーーー俺の愛称だ。敵からは畏怖の意味で、味方からは親しみを込めてそう呼ばれていた。






「そ、そうですか」



「君は既に国民的英雄となっていたのだな」 



マスターが俺の愛称を口にしてから周りにいた客が俺のことをギョッとした表情でガン見し始めた。



さらには他の客が俺を出汁に呼び込みをし始めてまた1人、また1人と店内に入ってきてあっという間に満席になってしまった。



「北方戦役の話を聞かせて」



「東部防衛戦も聞きたい!」



「港湾奪還戦も外せねぇな」



俺の武勇伝を聞きたいらしく皆が口々にそう言う。



「え・・・・・あ~」



「アハハ」



レイシアは困り果ててる俺を助けるどころか笑いながら見ていた。






その後ーーーー



「ありがとうよ」



「やっぱりアンタ凄いや」



「命は大切にね。英雄さん」



「また武勇伝を聞かせてくれよな」



すべての武勇伝を話すわけにもいかず、初陣だった北方戦役だけ語った。話し終えると客は満足したらしく会計を済ませて店を出ていった。



「フゥ」



「大まかな報告は受けていたが、そんなことがあったとはな・・・・・・・」



「少将が気にすること無いですよ。当時は生死を彷徨いましたが結果的にこうやって生きてますから」



「君の魔術が君自身を救ったわけか」



「そうですね・・・・・・防御魔法陣が俺を助けてくれました」



北方戦役ーーーーそれは初陣であり死にかけた戦いでもあり灰色の亡霊(グレイゴースト)と呼ばれる由来にもなった戦いだった。

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