第43話 戦勝パーティー
機巧暦2139年12月・ドイツ帝国帝都ベルリン宮殿
「まさか衣装変えてパーティーとは・・・・・・」
今まで軍服姿だった連中はスーツでピシッと決めていた。俺も黒いスーツ姿でパーティーに出ている。グレイスは緑色のドレスに身を包んでいる。
「おっ! 灰色の亡霊! 楽しんでるか?」
「これはレーゲル大将、カーチス大将・・・・・・先日はお世話になりました」
「肩の力は抜いた方がいいぞ。こういうパーティーでは楽しんだもん勝ちだからな。今は軍とか階級とか関係ねぇから、私のことはレーゲルで呼び捨てでいい。だろ? カーチス」
「レーゲルの言うとおりだ」
スーツ姿が慣れずに挙動不審になっていた俺にレーゲルとカーチスが話しかけてきた。
「綺麗な女が一杯だぜ!! 酒に女・・・・・最高だせ!!」
「カーチス、あまりハメを外しすぎるなよ? 特に女性へのナンパは禁止な? お前は女性が関わると問題ばかり起こすからな」
「わ、わかってるよ」
カーチスはレーゲルから注意を受けるとムッとした表情になる。
・・・・・・・・カーチス大将は女性にだらしないのかな? 戦場では厳しそうな感じだったけど・・・・・こうしてオフの時を見るとヤッパリ皆、一人の人間なんだよなぁ~
「しかし、お前視線とか気にならないのか?」
「視線? ああ~いつものことだからな」
さっきから女性からの視線よりも野郎共の視線が凄い。もちろん英雄がいるから当たり前か・・・・・・・・とはいかず、尊敬や畏怖の視線ではなくすべてはスケベ心全開の視線だ・・・・・・・・・・
「まあ俺も初めて見た時は女だと思ってナンパしようと思ってたけどな~」
「よせカーチス」
カーチスがそう言うとレーゲルが止めた。
「カーチスはまだ男だとわかって身を退いてくれたのでマシな方なんで・・・・・・・」
「おい大丈夫か? 目が死んでるぞ?」
「男だとわかってもアプローチかけてくる奴がいるのか・・・・・・・・」
死んだ目で話しているとカーチスから心配された。
「むしろついている方がギャップ萌えで最高だせとか言ってくるので手の付けようがない・・・・・・」
「アハハ!!」
「ぷっ!! アハハ、それは災難だな~!! ヤッパリその銀髪が原因じゃないのか?」
「切ろうとしたんですけど灰色の亡霊のトレードマークだから切れなくて」
「そ、そうなのか・・・・・・・・まあ頑張れや」
レーゲルは困り気味にそう言う。その後、カーチスとレーゲルは去っていった。
この銀髪、切ってもな~意味なさそうだし・・・・・・・・切っら切ったで一部の連中の性癖にドストライクして面倒くさいことになりそうだし
ベルリン宮殿・廊下ーーーー
その後、野郎共の視線に耐えられず俺は広間を出て廊下に来ていた。
「あっ・・・・・・・うん? 女性か・・・・・・・ん?」
廊下に置かれたソファーに1人の金髪の女性がだらしなく座っている。スゥスゥと気持ちよさそうに寝息をたてている。青色のドレスに頭には銀色のティアラをのせている。
「大丈夫ですか? こんな所で寝てると風邪ひきますよ?」
「うぅ~、ん?其方は・・・・・・・・」
「気づきましたか? ・・・・・・・って王女様!?」
「そう言う其方はユズキ少将じゃない? パーティーはどうしたのだ? 其方は主役であろう?」
ソファーで寝ていたのは南フランス共和国の王女・シャルロット=アルチュセールだった。
「ああ、抜けてきたんだ・・・・・・・視線がキツくてな」
「フフッ、そっちの意味で襲われそうになりかねないから逃げてきたのだな?」
「お姫様がそっちとか言うなよ・・・・・・・」
「別に男が男を抱くことは恥じではない。其方のような英雄を抱きたい男など沢山いる。一度、抱かれてみてはどうかしら?」
「・・・・・・・・俺はそっちの趣味はないんだよ」
「そうか。ああ、言い忘れてたわ。第五級功績獲得、おめでとう。私からは特に引き出物は何も無いわよ」
「ああ、別に・・・・・・・・」
南フランヌは壊滅状態だと聞く。さらに講和条約が締結されれば南フランヌは事実上消滅する。このことは彼女の耳にも入っているはず、本当は落ち込んでいてもおかしくない・・・・・・なのにこの姫様は気丈に振る舞ってる。
「ジロジロ見てどうしたのよ?」
「なぁ。これからどうするつもりなんだ?」
「・・・・・・・・・・考えないわね。一応、帝国政府が私を食客として面倒を見るって約束してくれているわね」
帝国が面倒を見る余裕なんてこれからあるのだろうか・・・・・・賠償金や領土や外交、内政、軍事とやるべきことは沢山ある。財政だって完全に赤字なはずだし賠償金で何億飛んでいくかわからない。そんな中で他者まで面倒見れるのだろうか・・・・・・・?
「・・・・・・・・・・俺の元に来ないか?」
「え? それはどういうことかしら?」
「俺はこの戦争の功績で東プロイセンの西にあるブレーメンっていう土地を貰ったんだ。そこで俺の配下たちと暮らさないか? 確実な資産もあるから帝国政府よりは安定してるはずだし」
「フフッ、わかったわ。其方の元で暮らすわ」
「即答!?」
「当たり前じゃない。帝国の政治はこれから不安定になるわ。其方の元ならいくらか安心して暮らせそうだしね」
・・・・・・・もしもの時はシャルロット王女を旗頭に帝国に乗り込めるかもしれないし、共和国統一の旗頭にも使える・・・・・・・・・・利用価値は十分ある。手元に置いておいた方が得だな。いや得しかない!!
こうしてシャルロットはブレーメンに来ることになった。