第38話 乾坤一擲
機巧暦2139年11月・ベルギー王国モンス
「撃て! 撃て! 撃てぇぇぇぇぇ!!」
「共和国の連中を塀から先に行かせるなァァァァァァ!!」
「グハッ!!」
「隊長がやられたァァァァァ!! 隊長ォォォォォ!!」
「ここを守り抜かねば!!」
モンス要塞は北フランス軍の八個師団《16万》と西フランス軍の五個師団《10万》の大軍勢に攻め込まれ地獄絵図と化していた。モンスを守るのは帝国軍の第一師団《1万2千》と第二師団《8千》で誰の目からも劣勢だった。
ドイツ帝国軍・指揮所ーーーー
「7基あった砲台が今は0基だ。敵の列車砲にやられるとはな・・・・・・・」
「迫撃砲5基と榴弾砲8基も榴弾によって壊滅状態・・・・・・・・食糧、弾薬もわずか3日しかない」
「援軍は途中で敵によって殲滅され」
「我らはすり減るのみ・・・・・」
カーチスとレーゲルは机に頭をつけながら呟いた。とるべき策が残されているはずもなく、ただすり潰されるのを待つのみだった。
「なぁレーゲル、敵には魔術師が二人もいるって話じゃないか。たしか我らには魔術師はいないだろ?」
「ああ、たしかにいないな」
「反攻してもやられるだけかよ・・・・・・・」
「・・・・・・何か作戦でも思いついたのか?」
「どうせ援軍もこない食糧もないんだ。戦死か飢え死かって選んだら勇猛果敢な帝国軍の兵士は名誉の戦死を選ぶだろうな」
レーゲルの言葉にカーチスは溜息をついた。
「お前、空腹で頭が逝かれたのか? 少し前まで無謀な作戦に従って兵士から恨まれるんだったら云々言ってなかったか?」
「ああたしかに言ったな。でもそれは逃げ道やほかの攻め方があればの話だ・・・・・・・・・はぁ、こんなことになるなら魔術師の一人でも我が軍につけてくれって参謀本部に言うべきだったな~」
「今さら愚痴っても遅ぇだろ?」
「そぅだな・・・・・・なあやってみるか? 全滅必須の作戦を」
レーゲルはようやく机から顔をあげた。
「全滅必須? なんだそりゃ・・・・・・・」
「我が軍の倍の敵を包囲殲滅するんだ。幸い機甲部隊は生き残ってるし、歩兵もかき集めればいくらか戦力にはなる」
「・・・・・・わ、わかった。すぐに兵を集めよう」
カーチスはそう言うとすぐに準備にとりかかった。