第37話 失う恐怖
機巧暦2139年11月・ドイツ帝国帝都ベルリン郊外
「はぁ、どうすりゃいいんだか・・・・・・・」
レイシアが帰った後、俺は1人で湯船に浸かっていた。普段はシャワーで済ませてしまうが今日は湯船でゆっくりしたい気分だった。
ふと目の前の鏡を見る。
・・・・・・こりゃ傷だらけだな。ま、当たり前か・・・・・・
鏡に映る自分の体には無数の傷ができていた。切り傷や銃創だらけだ。
よく今まで死ななかったもんだな・・・・・・・・・・
「柚希! 入るよ~」
「ああ・・・・・・・えっ!?」
友那の声がしたため特に何も考えずに返事した。風呂の扉を開けて友那がタオル1枚を体に巻いて入ってきた。
「・・・・・いつもは別々で入るのになんで今日だけ一緒なんだよ」
「仕方ないでしょ? あの雌狐にとられるのが嫌なの」
一緒の湯船で向かい合いながら友那は俺にそう言った。
「何度も言っているけど俺とレイシアはあくまで師弟関係だ。それ以上の関係はないからな」
「わ、わかった」
「ねぇ、後ろ向いて」
「後ろ?」
友那は猫なで声でそう言った。よくわからず友那に背を向けて座った。
「死なないでね。必ず帰ってきて」
「ああ」
友那が後ろから抱き締めた。タオル無しで抱き締めているため友那のスベスベの肌と胸の感触、そして体温が背中に感じる。
「今は振り向かないでね」
「・・・・・・・ああ、わかった」
(俺も不安だが、一番不安なのは友那なのかもしれない。俺が戦死した場合、政府から金が出るため金銭面では困らないとは思う。でも傍にいてくれる人がいなくなるのだ。精神的な支柱が無くすのはどれ程怖いことか・・・・・・・・・・・想像もしたくない)