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機巧魔術師の異聞奇譚  作者: 桜木紫苑
序章 異世界召喚
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第36話 バルカン半島の事情

機巧暦2139年11月・オスマン帝国バルカン半島



「つまり植民地にするということですか?」



「いや誤解されているようなら説明しますが、これは植民地ではなく保護国です」



榊原康介はブルガリアとギリシャの外務大臣と会談していた。いきなり武力で脅すのではなくまずは話し合いから切り口を見つけるというのが欧州本部のやり方だ。



「いや保護国は植民地と同等の意味を持っています。列強は保護国にしてから植民地にするのが常套手段ですから」



「列強のやり方とうちのやり方とをごちゃ混ぜにされては困ります。列強のやり方はすべてを搾取するやり方です。対してうちのやり方はすべてを与えるやり方ですよ? 貴国に損は無いはずです」



「・・・・・・・・なぜ我が国のやり方に対して他国が干渉してくるんです?」



ブルガリアの外務大臣はあからさまに不快感を示した。



「お節介かもしれませんが、一つ言いますとこのままでは貴国は列強に虫食い状態にされて消え去りますよ? 国民が奴隷に成り下がるのを貴方は黙って見ているつもりですか?」



この異世界では植民地になると国民は100パーセント家畜以下の奴隷として売り飛ばされる。奴隷が辿る運命は悲惨そのもので死ぬまで強制労働させられ使えなくなれば殺される。娼婦として働かされる者もいるという・・・・・・・・



「もしもの時はオスマン帝国が守ってくれる故、ご心配は無用です!!」



ギリシャの外務大臣が自信満々にそう答える。



「瀕死の病人と呼ばれるほど弱体化したオスマン帝国にロシア=ソビエトやドイツ、オーストリア=ハンガリーの侵攻を防ぐことができますでしょうか? ついこないだもオスマン帝国はロシア=ソビエトとの戦争に敗れたと聞きますが」



「・・・・・・・・・・・」



「・・・・・・・・・・そ、そう言われればそうだな」



「そのような自国も満足に守れないような国なんです。かつては最強国家だったかもしれませんが、それは既に過去の話です」



榊原康介がそう言うと2人の外務大臣は項垂れた。



「たしかに貴公の言われるとおり宗主国・オスマン帝国はかつては最強でした。それが今あの状況・・・・・・・・理解はしています。しかし・・・・・・・・」



「貴方の国の事情はよく知っていますから、すぐに返事をとは言いません。ここで内部分裂されては水の泡ですから慎重に検討してください」



「あ、ありがとうございます」



バルカン半島は長らくオスマン帝国に支配されていたがオスマン帝国が弱体化するとブルガリアの一部の勢力がロシア=ソビエトの軍事力を背景に独立を勝ち取るための反オスマン闘争を開始した。これによりブルガリアを手放したくないオスマンとモンテネグロの豊かな港町が欲しいロシア=ソビエトとの間に戦争が勃発した。


結果はオスマン帝国の大敗で終わりロシア=ソビエトはモンテネグロやブルガリアでの港湾の利権や鉄道敷設の利権を得た。しかしロシア=ソビエトが本格的にバルカン半島に進出してくるとブルガリアで親オスマン派の貴族が反発し、ロシア=ソビエトに支配されることを嫌いブルガリア、ギリシャ、モンテネグロに親オスマン政権をつくった。それに対して親ロシア=ソビエト派も北に逃れ、セルビアとルーマニアに親ロシア=ソビエト政権をつくり両者は決別した。


そして今、ブルガリア、ギリシャの新オスマン政権の内部で独立派と保守派に分かれていた。独立派は身分制の廃止、徴兵制の確立、近代技術の導入などを掲げオスマン帝国からの完全独立を目指している。対して保守派はこれまで通り宗主国であるオスマン帝国に守ってもらうという複雑極まりない状況となっていた。

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