第35話 恋愛対象
機巧暦2139年11月・ドイツ帝国帝都ベルリン郊外
「まさか弟子以上、柚希を恋愛対象に見てるんですか?」
「え!?」
友那は俺をレイシアに取られまいと自分の胸元に抱き寄せた。
「恋愛対象ね~・・・・・・・・」
な、なんでそこで即否定しないんですか!! 師匠ォォォォォ!! あくまで弟子と師匠の関係ですよね!? な、なんで頬を赤らめるんですかね?
「や、ヤッパリこの雌狐・・・・・・・私の柚希を誘惑しようと!?」
「フフフッ、この際、打ち明けるのが聡明か・・・・・・・いや修羅場になればヤバいし・・・・・・」
レイシアがさっきからモジモジしながらゴニョゴニョと何か呟いている。
「レイシア少将!!」活躍の場所ってどういうことですか!?」
「はっ!! あっ、ああ、申し訳ない。ゴホンッ!! 話を戻すとしよう」
「話を逸らすんですか?」
「やめろ友那」
友那が何か言いたげだが止めた。
「君が襲撃するのはモンスの要塞だ。ここにはルーアンから撤退した第一師団と第二師団がいるんだ」
「撤退というとヤッパリ壊滅状態とか?」
「うむ。壊滅状態とは言えないがそれに近い。そのモンスの要塞に対して兵力を増強した西フランスと北フランスが包囲したと聞いている。籠城側は奮戦しているらしいがいつ全滅してもおかしくない」
「・・・・・・・・帝都から援軍は送らないんですか?」
友那がそう言う。
「援軍は送ったのだが壊滅したのだよ。敵側に魔術師がいるとの情報も入っている。もしその情報が正しければ勝ち目はない。だから君が必要なのだよ」
「・・・・・・・・・・・魔術師は1人なのか?」
「2人いると聞いているよ。西フランス軍が五個師団《10
万》に北フランス軍が八個師団《16万》と言う規模だ。我々は奴らが本気で帝国を潰しにかかってきたと見ている」
「・・・・・・・・・・・・ッ!!」
「・・・・・・・・・・・」
「もちろん君にはそれなりに勝てるようにコレを用意した」
レイシアはそう言うと横長のトランクケースを出した。
「これを君に授ける。これで戦うといい」
トランクケースを開けて出てきたのは2本の刀と小瓶だった・・・・・・・・
「こ、これは・・・・・・・・銃じゃなくて刀?」
「君の魔術の特性を考えた末のものだ。銃では発射時に暴発するからな君の魔術では」
「でも銃や大砲、航空機、戦車や戦艦の時代に刀で戦えというのは時代遅れで無謀では?」
俺の言葉に友那もフムフムと頷いている。
「君は盾の魔術であろう? 攻守共に優れている故、問題ないと考えたのだ。さらに鉄をも真っ二つにするような魔術回路だ。銃よりも刀や剣の方が相性がいい」
魔術特性を考慮した上の判断か・・・・・・・・・
「分かりました。やってみます」
「え!?」
「おお引き受けてくれるか。あ、あと言い忘れていたがこの小瓶には50回分の魔力増量剤が入っている。魔力が足りなくなった時やここぞという時に使うといい」
小瓶には魔力増量剤とか言う怪しげな白い錠剤が入っている。
「今度こそ暴れてこい!! 迷いなど捨てていけ!! 我らの帝国の未来と自分自身の未来のために!! ・・・・・・・そして大切な人を守るためにな」
レイシアは声高らかにそう言った。迷いのない表情だった。
ちょうどよかった。レイシアから渡された元帥刀で戦うのは気が引けていた。レイシアの父親の形見だしな・・・・・・・戦場に持っていって失くしたらヤバいし・・・・・・・・




