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機巧魔術師の異聞奇譚  作者: 桜木紫苑
序章 異世界召喚
31/222

第31話 召喚した張本人

機巧暦2139年11月・ドイツ帝国ブランデンブルク邸



「お待ちしておりました。ユズキ=クオン陸軍少将。さぁ、中で陛下がお待ちです」



「陛下は何用で俺をここに?」



「それは陛下にお聞き下さい。さぁどうぞ」



俺は現皇帝の屋敷に来ていた。講師、陸軍少将と多忙な日々を送っていた俺のところに陛下からの書簡が届き、是非とも一度わが屋敷に来てもらえないだろうかということだった。単純な内容だけに俺は何かの罠ではないかとかなり警戒していた。ついこないだ陸軍参謀総長と内務大臣が落ち度により処刑されている・・・・・・・・まさか次は俺が・・・・・・・と思ったからだった。隠したい事情も色々とあった。大日本帝国・欧州本部の事とかな・・・・・・・・・・



「陛下、陸軍少将をお連れ致しました」



「ご苦労。開けて良いぞ」



「では」



屋敷のメイドに連れられ陛下の部屋の前まで来た。扉越しからメイドが声をかけると中から陛下がそう言う。



初めて会うからスゲェ緊張する・・・・・・・・声を聞く限り女性なのか?



ガチャ!



「私の部屋にようこそ。ユズキ=クオン歓迎するよ」



「有難き幸せ」



「まあそこに座るといい。立ちながらでは話ができない」



部屋に入ると窓際白いレースのカーテンが目に入ってきた。手前には長いソファーが置かれ、陛下はそこにゆったりと腰をかけていた。



「はい」



ガチガチになりながら陛下が座っているソファーの前に置かれた応接用の椅子に座る。



「君のことはレイシアから聞いているよ。もちろん世間からの君の評判もね」



「・・・・・・・・・」



「さて本題に入ろう。君にとってこの世界は異世界にあたるわけだが・・・・・・・・暮らしてみてどうかな? 馴れたか?」



「まあ・・・・・馴れました」



ん? 今なんて・・・・・・・異世界って・・・・・・・・



「どこの誰が召喚されるかわからない儀式だったから、かなりヒヤヒヤしていたが・・・・・・・ようやく安心できる」



「えっ召喚? 儀式? ・・・・・・・・まさか俺をこの異世界に転移させたのって」



俺の言葉に陛下は笑った。



「君をこの世界に招いたのはもちろんこの私だ。おっと! 名乗り忘れていたな。私の名はイリアス=ブランデンブルク。ドイツ帝国の第3代皇帝だ。国名は君がいた元の世界線と似ているがかなり違う世界だからそこは頭に入れておくように。以後お見知りおきを」



異聞帯という事なのか・・・・・・・



「・・・・・・・・・なんで俺を」



「見ての通りこの世界は戦争状態だ。断続的に小さい戦争があちらこちらで起きているわけだ。話し合いによる平和的な解決も幾度も行ってきたが結局は無駄になるわけだ。誰も平和を知らないし平和のありがたみを知らない・・・・・・・・・まあ私も平和な時代に生まれたわけじゃないから言えた立場ではないけどな」



「・・・・・・・・・・・・」



「平和な時代に生まれ育った人物がこの世界にいないのであれば、別世界から召喚すればいいと考えてな。古い文献を探して調べ漁った結果、召喚儀式のやり方を見つけたわけだ」



「元の世界に戻ることは・・・・・・・?」



まあ元に戻る方法があったとしても俺は戻る気はないけど・・・・・・・・



「残念ではあるが君はこの世界で骨を埋めることになるだろうな。今の段階で元の世界に戻る方法がないのだ。申し訳ない・・・・・・・・まあ、だとしても君には不自由ないよう生活や資金の面では苦労させないよう支援するつもりではあるから安心してくれ」



「それで俺は何をすればいいんですか?」



「君はおそらく平和な時代、または平和な世界から来たのであろう? ならば平和な世界、戦争がない世界のつくり方や成り立ちは知っているはず。その知恵を貸してほしいのだ。もちろん魔術の技量も高く評価している故、戦争の面での支援も頼みたい。こちらとしては全面的に支援するつもりだ」



イリアスは申し訳なさそうに俺に対してそう言った。



「・・・・・・・・わ、わかりました」



「これから長い付き合いになると思うがよろしく頼むぞ。さて君にドイツ帝国のどこかの領地を与えたいのだが何処がいい?」



「領地の件はお断り致します。領地を経営していけるような知識はありませんから・・・・・・・」



俺がそう言うとイリアスはイヤな笑みを浮かべた。



「君が密かに土地を購入していることは知っているのだよ。館を建てるとか言う話を聞いているが、あの土地は私の祖父の故郷・東プロイセンの西側の要地だ。あえてそこを購入したのか? それとも知らずして購入したのか?」



やはりバレていたか・・・・・いやバレない方がおかしいか・・・・・・・・・まあ深読みされてしまった以上、嘘でもいいから話しておくか



「知っていてあの土地を購入しました。戦略的な拠点になるかと思いまして・・・・・・・・海も近いので連合王国の艦隊が攻めてきた時でも瞬時に発見できますから・・・・・・・・・・」



「うむ。ならば館だけではダメだな。要塞化しなければな。後日、建設師団を送る故、建設指揮は君に任せるよ。要塞が完成した暁には君をブレーメンの領主にしてやる」



ヤバい・・・・・・・・・望んでないのにドンドン変な役職に就かされていく。



ドイツ帝国ではポツダム高等士官養成学園の臨時戦術講師、帝国陸軍少将を務め、南フランス共和国では婿候補で外交官・・・・・・・当然ながら給料はいいし待遇もいいし将来も安泰だ。でもなんか違うのだ・・・・・・・・・なんか自由に身動きができなくなってきているような気がしてならない。

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