第3話 幼馴染
機巧暦2139年9月・ドイツ帝国帝都ベルリン郊外
「ハァ~ 新兵訓練なんてどうやるんだよ・・・・・・」
「大変そうね。 ハイっ! どうぞ」
「ああ、ありがとうな」
帝国の首都郊外にある自宅に戻った俺は疲れで布団に倒れ込む。異世界転移させられた当初は野宿が普通で川の水で身体を洗い、筵の上で寝ていた。軍に入隊してからは寮の一室が与えられ大尉に昇進してからようやくマイホームがもてた。
ちなみに異世界転移させられたのは俺だけではなく幼馴染みも一緒に異世界転移していた。
「どーしたの? ボーッとして」
ツンツン ツンツン
布団から身体を起こして幼馴染みが淹れてくれたコーヒーを飲みながらボーッとしていた。幼馴染みが俺の頬を突っつく。
「いや先のことを考えると鬱気味になるな。この戦争に勝ちはない・・・・・負けあるのみだ。俺らもそれなりの覚悟はしたほうが・・・・・って!?」
「えい!」
幼馴染みの人差し指が俺の唇に触れた。幼馴染みはメッ!という仕草をした。
「!?」
「また柚希の悪い癖が出たから阻止しただけだよ。考えすぎはかえって事態を悪化させるよ? 気楽にいこう・・・・ねっ?」
「・・・・・・・・」
黒い着物には金色の鶴の刺繍が入っていて、いつ見ても豪華絢爛さに目を奪われる。着物の豪華さをより引き立てる。腰あたりまである濡れた黒い髪にキリッとした紅い瞳に薄らピンク色の唇。
幼馴染みの名はーーーー紅坂友那
まあ幼馴染み・・・・・・というか彼女に近いかもしれない・・・・・・
「ねぇ? 私さ、このまま異世界で骨を埋めるのも悪くないって思い始めてるんだけどさ。柚希はどう思う?」
「俺も同意見だ。どうせ元の世界に戻ってもな・・・・・」
俺は普通の高校生だが端から見れば普通じゃないのだ。久遠家は一大財閥で政治にも携わる家で所謂”名門”っていうやつだった。俺は名門の跡継ぎで厳しく躾けられてきた。
幼馴染みは久遠家の屋敷の付近にある神社の宮司の一人娘で巫女だった。俺たち二人は久遠家と紅坂家が代々の繋がりがあったこともあり、赤子の頃からの馴れ合いだった。
俺が中学生になると両家の交流が途絶えたことにより俺たちも離れ離れになった。でも高校に入ってから偶然にも同じクラスで再会した。その後、昔語りに花を咲かせてそのまま自然と恋人として付き合うことなったのだ。
二人は順調にいっていたがーーーーそれを当人の親たちが許さなかったのだ・・・・・
久遠家の跡継ぎだった俺には親たちが決めた許嫁がいた。高飛車なお嬢様といった感じで俺とは性格が合わず疎遠になっていた。願わくば破談になれば・・・・・・・と思っていた。
許嫁がいるにも関わらず外で違う女と付き合うことは久遠家では御法度だ。それは紅坂家でも同じだった・・・・・・・
そして俺たち二人がとった選択はーーーーーーー既成事実をつくり駆け落ちすることだった・・・・・・・
「まさか駆け落ち先が異世界だなんて思わなかったけどねぇ~」
「まあ曰く付きの洞窟だったからな。何が起きてもおかしくなかったしな」
家から電車で2時間程の場所に海岸があり、誰も近づかない曰く付きの洞窟というのがあった。俺たち二人はそこで既成事実をつくろうとしたのだ。
なぜか俺はスーツ姿、友那は神社の娘らしく着物姿だった。残念ながらそこから先の記憶がなく気付いたら異世界転移していた・・・・・・・
まあ何がともあれ尊敬はしているものの煩わしい親から離れることが出来て二人とも内心はホッとしていた。
「さて明日から新兵訓練だ。寝るぞ」
「おやすみ。柚希」
「ああ、おやすみ。 友那」