第24話 大日本帝国・欧州本部の野心
機巧暦2139年11月・ドイツ帝国帝都ベルリン郊外
康介は何の迷いもなくそう言った。隣では唖然としている友那がいた。
「オスマン帝国は関係ないだろ?」
「まあな。でも資源がたくさんある場所を狙うのは当たり前のことなんだぜ? きれい事なんて言ってられねぇんだよ。誰だって生きるのに必死なんだよ」
「康介、大日本帝国・欧州本部・・・・・いや新田中将はこの欧州が中央同盟国と協商連合国って陣営に分かれているのは知っているのか?」
「もちろん知っている。新田中将は知ってオスマン帝国侵攻を決めたんだよ」
戦争する上でフランスやドイツは他国から軍事や経済の面で協力を得るために陣営を形成していた。一つ目がフランス共和国・イギリス連合王国・ロシア=ソビエト連邦の協商連合国。二つ目がドイツ帝国・オーストリア=ハンガリー帝国・オスマン帝国の中央同盟国だ。
「欧州本部がオスマン帝国を侵略すれば俺たちドイツ帝国も黙ってないぞ? 他国から侵略された場合、その国の同盟国は参戦しなければならないと条約に書かれてるんだからな」
「ドイツが今の状況で他国を支援できる余裕はないと見たからトルキア侵攻を決定したんだよ。ドイツに兵を割く余裕があればこんな自殺行為に等しい暴挙にはでないしな」
たしかに康介の言うとおりドイツに余裕なんかない。北フランスや西フランスに道を阻まれ消耗戦に引きずり込まれていると聞く。さらにロシア=ソビエト連邦とは不戦条約を結んでいるものの、いつ条約破棄されるかわからないしイギリス連合王国もいつ参戦してくるかわからない・・・・・・・・下手すれば四面楚歌になりかねない。
「はぁ・・・・・・・・・そうか」
「上層部に報告した方がいいと思うぜ?」
「戦力を割くような余裕なんか無いだろうから・・・・・・・・・・まともに取り合ってくれないだろうな・・・・・・・・それでオスマン帝国を滅ぼした後はどうするつもりなんだ?」
「オスマン帝国の東にある支那国と同盟を結ぶって話だ。支那は大日本帝国と利権の問題で対立していると聞く。さらにを後ろから支那国を支援しているアメリカ合衆国も味方につける。これで大日本帝国は孤立して勢力を弱めるって話だ」
「・・・・・・・・・・・・」
康介はそう言うと酒を一気飲みした。やけ酒のようにも感じた。
「とにかく! この世界は戦わなければ救われないんだ。戦うしかないんだよ」
「・・・・・・・・・・・正義って何だろう・・・・・痛っ!!」
パンッ!!
頬に痛みがはしる。頬を抑えながら俺はビンタした康介を見た。
「うじうじしてねぇで腹くくれよ。正義なんてねぇんだよ。正義なんて誰にも分からねぇんだよ!! 柚希、お前は英雄なんだよ。英雄なんだったら英雄らしく後ろや脇なんか見ずに前を見て進め。俺はお前のうじうじした姿が一番見たくねぇんだよ」
「・・・・・・・・・・・」
「まだ舞台にも上がってねぇんだよ。俺たちは・・・・・・・・立派に演じきってからどうこう言おうぜ?」
「ああ」
コイツが言う舞台とは戦争のことだ・・・・・・・いや戦争は起きているから世界大戦だ。世界大戦という地獄の舞台でどれだけ演じきれるか、どれだけ踊れるかということだ・・・・・・・・・・舞台の幕が下りる頃にはどれ程の演者や観客が生き残っているだろうか・・・・・・・・・・・




