第23話 東方遠征
機巧暦2139年11月・ドイツ帝国帝都ベルリン郊外
「で・・・・・・なんでお前がいるんだ?」
「そんなこと言うなって、別にいいじゃないか親友なんだからさ」
新田との飲み会を終え俺はベルリン郊外の自宅に戻っていた。玄関のドアを開けてリビングに行くと当然のように康介がソファーでくつろいでいた。
「親友だからって勝手に家に上がるなよ・・・・・・・・・・」
「許可とってから入ったに決まってるだろう?」
康介はキッチンに目を向けた。キッチンには洗い物をやっている友那が立っている。
友那がいれたのか・・・・・・・・
「そうか・・・・・・・・ならいいや」
「なぁ、柚希 酒飲まねぇか?」
康介は酒瓶を片手に満面の笑みを浮かべた。
「あぁ~すまないが・・・・・・・すでに外で酒飲んできてな。少し酔ってるんだ」
「え? 誰と飲んできたの?」
「誰と飲んだんだよ?」
コイツらの頭には一人で酒を飲むという概念がないらしい・・・・・・・・・
「いや、新田中将の屋敷で一献やってきたんだ」
「俺の上官とか?」
「ああ、たまたま帝都の駅でばったりと会ってさ。一応、資金援助してくれてる相手だし、断るのも気まずいから礼にと思ってさ」
「そうか・・・・・・・・まあそんなことは関係ねぇ!! 飲もう!!」
「えぇ・・・・・・・」
その後ーーーー
「なるほど新田中将はそんなことを話していたか・・・・・・・・・それで柚希はこれからどうする気なんだ?」
「どうする気って?」
「はぁ、お前はドイツ帝国側の人間になるのか、それとも欧州本部側の人間になるのかだよ。どっちにつくつもりだ?」
康介は真っ直ぐと俺の瞳を見つめてくる。
「・・・・・・・・・・・わ、わからない。俺はドイツ帝国の人間だ。俺をこの地位まで引き上げてくれた陛下や参謀本部、さらに一緒に戦ってくれる仲間や師匠を裏切ることはできねぇな」
「今はそれでいいかもしれねぇが、いずれはどちらに味方するか決めておかないと火の粉をもろに被ることになるから気をつけろよ」
「火の粉だと?」
「新田中将からどれくらい話を聞いてるかわからないが、一応・・・・・・・・・・話しをしておくと今の大日本帝国・欧州本部はイタリア王国のマルタ島を借りている弱小国にすぎねぇ。でも新田中将は《東方遠征》という計画をたてている。東方遠征が終わる頃にはドイツ帝国も弱りきっているはず、東方遠征によって強大化した俺らに勝てるはずはないということさ」
「東方遠征? なんだそれ?」
「まあ大日本帝国を経済的にも軍事的も弱らせようって計画さ」
「・・・・・・・・・・・なあ大日本帝国ってそれほど脅威になるような国なのか? たかが極東の島国にビビりすぎだ」
「まあ言い出したのは大日本帝国に恨みがある新田中将だからな。いずれは自分の脅威になるとでも考えてるんだろう。実際どんな実力があるかわからねぇ国だからな・・・・・・・・・・・確かなのは国力が10倍以上の差がある帝政時代のロシアを倒したことがあるってことだな。あと資源はないが技術と練度、根性は世界一だと聞いたことがある」
「で、大日本帝国をどう弱らせるってんだ?」
「オスマン帝国を滅ぼす」
康介はあっけらかんとそう言う。