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機巧魔術師の異聞奇譚  作者: 桜木紫苑
第五章 内戦と統一
222/222

最終話 戦争のその果て・・・・・・

ーーーーオーストリア=ハンガリー・ブダペスト宮殿




 「そうか。帝国は滅亡したか・・・・・・」



「・・・・・・・・はい。フランクフルトは火の海と化したようで宮殿も焼け落ちたと」



グレイスは沈痛な表情で俺にそう伝える。



 帝国滅亡の報せが俺の元に届いたのはフランクフルトが陥落してから15日余りが経った頃だ。



 聞いた話では陥落後に帝国軍はニュルンベルクに篭もり徹底抗戦したらしいが南から共産党軍、北から自由党軍、さらに西からは帝国を裏切ったアーチゾルテ=レーゲルの手勢に三方面から攻められ壊滅したという。



「・・・・・・・・・そうか。それにしても報せが15日も遅れるなんて不自然だな。ラジオも新聞もドイツ帝国滅亡なんて報じてない」



「恐らく徹底した情報統制か情報封鎖が行われているかと・・・・・・・この半月間ドイツからの情報は一切、こちらに流れてきませんし。この情報もオーストリアの国境に展開する友軍からのものでして」



「帝国滅亡の確証は・・・・・無いという事か。ニュルンベルクの徹底抗戦の件も真実か疑わしいな」



「はい。ですので真偽を確かめるべく一度、帰国してみては? 背後にオーストリア=ハンガリー帝国の支持がある少将は無敵です。今や弱体化したドイツには誰も少将に刃向かえる者はいないかと思われます」



俺は溜まりつつある書類に目を通しつつグレイスの話を聞いていた。



 正直、今ドイツに構っていられる程俺は暇じゃなかった。バルカン半島でのゴタゴタが収束するかのように思っていた矢先にギリシャ統監府の榊原康介が職務放棄し他の側近も職務放棄した。毎夜毎夜の宴会騒ぎでさらに夜な夜な街に繰り出しては暴行に略奪、放火などギリシャは無法地域と化していた。



「今はドイツに向けるような兵力は無い。グレイスも分かっているはずだぞ。バルカン半島でまた不穏な動きがある。俺らがドイツに向かえば連中は必ずハンガリーに攻めてくる」



「ならば私がバルカン半島に行き、少将がドイツに行ってはいかがですか? ルーマニア、ブルガリアで兵を集めてギリシャに攻め入ります。今度は手加減無しで確実に統監府の奴らを叩きます」



 グレイスは得意満面にそう言うがルーマニアやブルガリアは独立国だ。首相の同意が無ければ兵の募集は出来ない。さらに言えば先のバルカン半島での騒乱のお陰で経済は立ち直ってないと聞いている。



 この状況下でドイツに手は出せない。



「却下する。俺はドイツには介入しない方針に決めたからな。戦争経済研究班の出した書類にもオーストリア=ハンガリーはバルカン半島を注視しつつ富国強兵に努めるとあっただろう?」



「しかし少将はドイツの臣民であり養子の形とは言えども皇族。皇族でありアイネス陛下から皇旗を賜ったからには帝国を助けなければ不義にあたります。無視すれば民からの支持は急落し誹りを受けるハメになりますよ。少将はそれでも良いのですか?」



「なぁグレイス、俺は富や名声には興味はねぇんだ。例え俺が兵を出したとしても戦局は変えられねぇし。逆に内戦は泥沼化するかもしれねぇ。そんな展開、誰が得をするんだ?」



「・・・・・・そ、それは」



「ドイツは俺らの故郷だ。故郷を心配する気持ちは分かるけど今は先々の事を考えて堪えてくれ。今動いたとしても事態は悪化するだけだし最悪、命さえも落とすハメなるから」



俺は書類を見るのを止めてグレイスの顔を見る。俺の問いかけにグレイスは俯く。



 俺は最低だ。故郷を見捨てろと言っているようなものだ・・・・皆の命を守るにはこうするしか無かった。


 

 俺に故郷を想う気持ちは無い。だって俺はこの異世界に転移してきた身だから。むしろ俺は新たな帝国をつくろうと構想を抱いていた。亡命してくるであろうアイネス帝を据えドイツとオーストリア=バルカン帝国を統合し「神聖帝国」をつくろうと・・・・・・・・・


 しかしその構想は夢想に終わる事になった。理由は病原菌により俺やグレイス、さらに友那が病死したからだ。


 ドイツは長らく戦争中にあり戦死者の遺体の埋葬が滞り、道端に積み上げられる有様だった。インフラ、医療などが破壊され衛生状態が劣悪となり病原菌の温床となった。初めはドイツ国内で猛威を振るい、フランス、オーストリア、イタリア、ポーランドへと拡大したからだ・・・・・・・・

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