第38話 帝国の消滅
ーーーードイツ帝国フランクフルト宮殿・皇宮内城
「陛下ァ!! 陛下はおられますかぁぁぁぁぁ!?」
「騒がしいな。何事か? まあ大方の予想はついているが言ってみよ」
アイネスが籠る寝室に皇宮守備部隊の兵士が駆けつける。アイネスは天蓋付きベッドに仰向けになりながらそう言う。
「はぁはぁ・・・・・・皇宮の外城が反乱軍により突破され内城になだれ込んできております。我ら守備部隊は必死に防衛しておりますがどれだけ持ちこたえられるか分かりませぬ故、陛下にはここから逃げる事をお勧め致します」
「反乱軍か。誰が反乱軍を率いているか?」
「・・・・・・・・・・」
兵士は良いづらいらしく口をつぐむ。
「其方が口をつぐむ事はあるまい。話してみよ」
「はい・・・・・・・・どうか驚きませぬよう。反乱軍を率いているのはアーチゾルテ=レーゲルとアルフレート=フォン=レイシアにございます。それぞれ兵力は1万余りかと思われます。皇宮外城の前門をレーゲル宰相が攻め、後門・・・・・・裏門をレイシア将軍が攻めている状況です。突破されたのは裏門の方でして既に守備部隊は壊滅状況にあります」
「分かった。報告ありがとう。もう下がっていいよ。あぁそれからクレアをここに呼んでくれ」
「御意」
叔母が反旗を翻したというのにアイネスは驚く素振りも無くベッドに横たわったままであった。その後、兵士に呼ばれたクレアが寝室にやって来る。
「陛下どうなさいましたか?」
「ここから逃げるから護衛を頼む」
「分かりました陛下。この宮殿には隠し通路がございますからそこから逃げましょう」
軍服姿のクレアは深々と礼をするとアイネスの腕を引き部屋から廊下へと連れ出す。その後、アイネスは10人余りの近衛兵と共に皇宮の裏手へと回り包囲が手薄な場所へと移る。
アイネスは去り際に名残惜しげに皇宮の方を振り返る。皇宮は相次ぐ砲撃と反乱軍による放火で燃え上がり崩れつつあった・・・・・・その後、皇帝を逃がすまで時間稼ぎをしていた近衛軍がレーゲル軍に降伏した事で皇宮の戦いは終結した。
皇帝アイネスと僅かに残った臣下はフランクフルトを離れると反乱軍に捕まるのを恐れそのまま行方を眩ました。フランクフルトが焼け落ち皇帝が行方不明となった事で帝政は完全に滅亡した。
強国ドイツ帝国という巨人が倒れ欧州のバランスは完全に崩壊した・・・・・・・・