第20話 追撃阻止
機巧暦2140年5月・ドイツ帝国・イェーナ
カーチス軍本隊が山間部を北上しマクデブルクに出た頃、殿の警備部隊は敵の追撃を警戒しつつ進軍していた。警備部隊は僅か500余りの大隊規模で装備も脆弱だった。
「いいか。弾はいつでも撃てるようにしておけ」
大隊長は手に汗を握り締めながらそう言う。
「大隊長、見えました敵です。あの数は恐らく1000人程かと思われます」
「うむ 距離は?」
「600程かと・・・・・・相手はまだ此方の存在に気付いていません」
双眼鏡で遠くを見つめていた兵士がそう言う。
「此方が主導権を握らなければ防ぎようがないな。照明弾をあげろォ!!!!! 素敵なナイトパーティーの始まりだァ!!! 今こそ我ら警備大隊が活躍の時だ」
「「「オォ!!!」」」
パァンッ!!
1人の兵士、閃光弾を空に放つ。放たれた弾は眩い光を放ち辺りを明るく照らし出す。
「撃てェェェェェェェェ!!!!!」
ダダダッ!!
警備大隊長が腰から指揮用の剣を引き抜くと前に高らかに掲げる。
そしてーーーーー
「突撃ィィィィィィ!!! 帝国に栄光あれ!!」
警備大隊長自らが抜剣し先頭を切り敵軍に向かって走る。それに遅れるなと後続の部隊も銃剣を構えて走る。
「なっ!?」
「敵襲ゥゥゥゥゥ!!!!」
「うがっ!!?」
「状況を報せよ!!」
いきなりの襲撃に追撃部隊は混乱に陥る。先頭が突然停止した事により後続の部隊が玉突き事故を起こす。
「大隊長!! 先頭部隊が停止しました!! さらに肉厚しますか!?」
「よし!! すり潰せ!!!」
大隊長がそう言うと左右前方の山林から警備部隊が突撃を開始。追撃部隊の先頭と後続を分断し先頭部隊を孤立させ包囲する事に成功する。
警備部隊は少ない500の兵力を3つに分け正面は大隊長が率いる100人が敵先頭部隊を停止させ視線を引き付ける。追撃部隊が正面に目をとられている隙に左翼200人と右翼200人が敵軍の左右の山林に隠したのだ。
「大佐!! 我ら包囲されました!!」
「後続隊は!?」
「暗闇でさらに砂埃が酷くて分かりません!!!」
「散開しろ!! 1人でも多く逃げ出すのだ!!」
大佐の言葉に兵士が頷く。
「散開だ!! 散開せよ!!! 敵の策にハマるな!!!」
「「「「うぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!」」」」
大佐の命令により追撃部隊は散開を開始する。さらに後続隊も撤退を開始し警備部隊による追撃阻止は成功した。