第17話 師、動く
機巧暦2140年5月・ドイツ帝国・リューネブルク
「レイシア様、準備が出来ました。号令をかけて頂ければいつでも出撃出来ます」
「ありがとう。どれくらいの人数を揃えられたかね?」
「一個軍団(3万)は揃えました」
「十分すぎる人数だな」
シャルロットとの同盟締結後、すぐさまレイシアはノイブランデンブルク王カーチスを叩く為に軍を編成し東プロイセン地域のリューネブルクに進めた。翌日に進路を北に変えロストクに軍営を築いたレイシアはいつでもカーチスの拠点ノイブランデンブルクを襲えるように準備を進めた。
「ところでカーチスの本隊はどこにいる?」
「それがベルリンから見て南西のズールにいますね。レーゲルと対峙しているようでして動きは無いと思います」
「バカ弟子はどうかね?」
そう言うとレイシアは卓上の地図を睨む。
「・・・・・・情報によるとニュルンベルク周辺に兵を派遣したと聞いています。一応、中立という立場をとっているみたいで」
「予想より早いお出ましのようだったか・・・・・・・・国の防衛がままならないな内に外征に手をつけるとはバカ弟子は何を考えているんだか」
「・・・・・・・・」
「まあいい!! バカ弟子は無視して我らだけでカーチスを叩こう。どうせ連携は厳しいと思うし」
レイシアはニヤリと笑うと晴れやかにそう言う。周りにいた配下らはレイシアが明らかにユズキを警戒しているのが丸わかりだった・・・・・・
その後ーーーーー
「レイシア様、ベルリン周辺を偵察したところ我らが最初に粉砕すべき敵はカーチス軍ではなくライプツィヒにいるアルフレート軍である事が判明しました」
「アルフレート軍?」
「アルフレート本家の残党では? 北部地域にまだ残っていたのでしょう」
「なるほど。ではアルフレート残党軍を撃ち破るのが先決か・・・・・・・・」
偵察兵の言葉に一瞬顔をしかめるが側近の言葉に直ぐに表情を和らげる。
「アルフレート本家の軍を率いる事が出来る有力な将がいるのか?」
「調べましたところヘルマン陸軍大臣は亡くなりましたが遺児はいるそうで名をアルフレート=フォン=リリィといい。恐らくカーチス側はこの人物をアルフレート=フォン=アイネスの対抗馬として担ぎ出している可能性があります」
「ならばライプツィヒに駐屯しているアルフレートの残党軍を潰せばカーチス軍は瓦解するという事か・・・・・・・」
レイシアがそう呟くと側近は頷く。
「分かった。これより我が軍はアルフレート残党軍を相手に戦闘を開始するものとする!! 敵兵力は約30万と聞く。だが恐れる事はない!! 君らは父上と共に戦ってきた歴戦の勇士、リリィなどという青二才が率いる軍など簡単に捻り潰せるはず!! 武運を祈る!!!!」
「「「御意!!!」」」
レイシアの激励にその場にいた将官らは力強く頷く。