表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
機巧魔術師の異聞奇譚  作者: 桜木紫苑
序章 異世界召喚
20/222

第20話 新天地ブレーメン

機巧暦2139年10月・ドイツ帝国帝都ベルリン郊外



「ねぇ、南フランス軍が敗北したみたいだね」



「そうか・・・・・・・・・もう新聞記事になってるのか」



「ほらここの記事」



テーブルを挟んで床に座っている友那が新聞の記事を俺に見せてきた。記事には南フランス軍がガチガチに防御を固めていた西フランス軍の要塞に無謀にも突撃して壊滅したと載っていた。



「・・・・・・・・・」



「まあ~ うちらには関係ないことだよね~。帝国と南フランスが同盟を結んでるって聞いたことないし」



「あはは!! 確かにそうだね」



冷や汗ダラダラだ・・・・・・・・・・当然ながら友那には俺が単独で南フランスに資金援助していることを知らないのだ。まあ莫大な資金があることは隠しようがないから話していけど・・・・・・・・・・・・



「ねぇ柚希、突然だけど今住んでいる家から引っ越さない?」



「なんでだ? ここは陸軍本部に近いからいいじゃないのか?」



「ほら、南フランスが負けたってことは近い将来この近辺にも西フランス軍が襲来するはずじゃん? だから私たちは身の安全を確保するために帝都に近いこの場所よりも遠い場所に引っ越したほうがいいと思うんだよねぇ~」



友那は新聞に載っている帝国近辺の地図を指差しながらそう言う。



「引っ越すにしてもどこに引っ越すんだ? 一応俺は陸軍少将だから帝都にある参謀本部からの呼び出しを受けることもあるからな。あまり帝都から遠い場所はよしてくれよ」



「了解!!」



遠方に引っ越したくない理由を参謀本部や階級やらのせいにしたが、本当の理由は資金を減らしたくないからだった・・・・・・・・・・人が一生暮らしていく上でかかる費用は総額2億~3億だ。俺の手元の資金は約3兆ペール。3兆のうち南フランヌの支援金として4000億をシャルロットに送っているため実質的に手元にあるのは2兆6000億だ。余裕はあるが今は戦争状態だ。経済がどう動くかわからないし紙くずになる可能性だってある。



「ねぇ、充分なお金があるのに使わないのは損だよ? 少し散財してみるのもいいんじゃない?」



コイツ・・・・・・・・俺が金を使いたくないことを見抜いていやがる。



「そうだな。どこかの土地でも買って家でも建てるか」



「うん」



友那は満面に笑みで頷いた。



本当コイツの笑顔には癒やされる・・・・・・・・苦しい戦場や思い出をすべて洗い流してくれるんだよな~






機巧暦2139年11月・ドイツ帝国ブレーメン



その後、俺はドイツ帝国のベルリンから北西部にあるブレーメンという広大な野原が広がる土地を約8000万で一括購入した。



「広いのに意外と安く済んだね~」



「もしかすると立地が悪から買い手がいなかったんな」



「え? こんなに長閑な場所なのに? ほら丘から海が見えるよ! 避暑地とか別荘とか建てるのに最高の場所じゃん!!」



「友那から見ればそうなのかもな・・・・・・・・・」



友那がここに住みたいと言ったから購入したけど・・・・・・・・・・・立地が最悪すぎるな。



「それってどういうこと?」



「軍事的は最悪な立地ってことだ・・・・・・・・このブレーメンは帝都ベルリンから北フランス共和国に続く街道を遮る位置にあるんだ。当然だけど戦争状態になればここは交通の要になるから戦場になる」



「え~ じゃ~戦場になったら海側からキールに逃げ込めばいいじゃん」



「いやどう考えても距離的に無理だろ。ここは帝国領だぞ。帝国領が攻め込まれるということはそれだけ追い詰められた状態ってことになる。その頃になればイギリス連合王国の海軍が海上封鎖していて一歩でも海上にでも出れば海の藻屑になる。さらに言えばここは帝都ベルリン攻略の為の補給最前線にもなる」



「逃げ場ないじゃん・・・・・・・・買っちゃったから安易に手放せないじゃん!!」



友那は頭を抱えてうずくまった。コイツは後先考えずに行動する癖があるのだ。



「買ったからにはしっかりとした家を建てるつもりだから安心しろ」



「え? 本当? ありがとう!!」



「ああ任せろ!!」



その後、家が完成するまでは帝都近郊の家に住むことになった。俺は第一航空戦隊の2万人を動員して家の建設にあたった。最初は俺と見ず知らずの日雇いの連中とやろうと計画していたが噂を聞きつけたグレイスが隊員に声をかけたのだ。その結果あっという間に2万人が集まったのだ。








建設小屋ーーーーー



「少将、家の配置はどうするんですか?」



「グレイス、今は任務じゃないんだ少将って呼ぶのは止めてくれ。せめて久遠って呼んでくれ」



「わ、わかりました」



一応、仮拠点として荒ら屋を造ってそこに机と椅子を持ち込んで簡単な指揮所が完成した。まあ家が完成したら取り壊すが・・・・・・・・・



「まずはあの丘陵をどうにかしないとな~ よし!! あの丘陵を突き崩して平にしてその上に家を建てる。それで丘陵の土は家の周りを囲う土塁として使う。土塁の幅は20mで高さは3mにしてくれ。土塁の周囲には幅20m、深さ5mの空堀を掘ってくれ」



「わかりました。さっそく取りかかりましょう」



「ああ、あと肝心の家なんだが・・・・・・・・任せる」



「わかりました」



 




その夜ーーーーー



「工事は順調に進んでいます」



「ああ・・・・・・・・」



「このままいけば早い段階の完成になりますね」



俺は指揮所でグレイスから今日の工事の進捗状況を聞いていた。



「・・・・・・・・・なぁ、グレイス」



「なんです?」



「魔術の鍛錬の相手になってくれないか?」



「・・・・・・・・今からですか?」



「ああ、できれば夜のがいい」


 

「わかりました」

 







そしてーーーーー



「少将・・・・・・・本当にいいんですか?」



「ああ、本気で頼むぞ」



建設現場は工事中とは言えどもまだ資材が集まらずバトルフィールドとしてはうってつけの場所だった。周りには邪魔はいないし照明といえば月の明かりのみ。静かに風が吹く・・・・・・・・・グレイスの手には普段戦場で使っている銃が握られている。



俺の魔術防御は鉄壁を誇る。でもその強度の限界はわからないし発動条件もわからない・・・・・・・・・こんな状態で修羅場を切り抜けて最強を名乗ったとしても意味がない。能力を操ることができて初めて最強を名乗れる。



「フッ 全力で・・・・・・・・・」



グレイスは銃弾を装填すると銃口を俺に向けて引き金に手をかける。 


「・・・・・・・・・・・っ!!」



体中の魔術回路から手のほうに魔力がたまり外へと放出される。そして半円形の紅の盾が形成される。






「甘いよ!!」






バァン!



  



「クッ!!」

 






パリッン!!






・・・・・・・やはり盾1枚では使い物にならないのか~





グレイスが放った銃弾は真っすぐ防御魔方陣の中心へ向かい、魔方陣にぶつかり銃弾は潰れ盾は割れてしまった。



「それなら・・・・・・・」



さらに魔力を掌に集中させ7枚の盾を形成させる。



「へぇ~ 初めて見たけどやっぱり綺麗だね」



「・・・・・・・・・・・」



「ならこれならどう?」 



グレイスは感心したようにそう言った。いつもの冷静な口調ではなく年相応の口調だ。グレイスは懐から銃弾を取り出すと銃に装填した。そして再び引き金を引いた。放たれた銃弾は5枚の盾を破壊し6枚目に差し掛かろうとする寸前で速力を落とし地面に落ちた。



「グレイス・・・・・・・・さては魔弾を使ったな?」 



「使ったよ? だって7枚の防御を破壊するには魔弾(これ)が一番効果的かなって思ってね」 



「魔弾か・・・・・・たしか魔術回路を破壊するためだけの銃弾とか聞いたことがあるな」



「そう。 魔術師殺しの銃弾」



「はぁ~ 本気でやれとは言ったけどそこまでやれとは言ってねぇよ。もし俺の防御が完全に破壊されてこの身に銃弾を受けていたらどうするつもりだったんだよ・・・・・・・」



「その時は・・・・・・・・・・」



グレイスは目を伏せた。自分でもやり過ぎだと感じたらしい。



「冗談だ。本気でやれって言ったのは俺だからな」



「はぁ・・・・・・・・」



「まあ魔弾は無駄に使わないほうがいい。なんせその銃弾は自らの血が原料なんだからな。ここぞという時に使うのが一番だ。付き合ってくれてありがとうな」



「はい」



俺は去り際にグレイスの肩に手を置いた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ