第14話 膠着と焦り
機巧暦2140年4月・ドイツ帝国・ズール
「中々動きませんな・・・・・・・」
「今日で何日目だ?」
「10日目です」
カーチス軍とズールで対峙してから10日が経つが戦況に変化なく時だけが過ぎていく。
「機甲師団はまだ集積地を見つけられないのか。タイムリミットまで後21日だ。早く見つけてくれれば・・・・・・・」
「このまま戦況が動かなければ別の方法も考えなくてはなりませんね」
「戦力を割くような戦術は無理だな・・・・・・しかし何故動かない!! カーチスは何を考えているんだ!? 今奴らが動けば我が軍など木っ端微塵に出来るはず!! 絶好の好機だというのに・・・・・・・・・」
優勢にも関わらず中々、軍を動かさないカーチスにレーゲルはイライラしながらそう言う。相手が何を考えているか分からない恐怖がレーゲルの冷静さを根底から崩し始めていた。
そんな時ーーーーー
「ラインハルト様が帰られました!!」
「直ぐに会う」
兵士の報せで情報収集にの為に陣を離れていたラインハルトが帰ってきたと聞くとレーゲルは頬を緩める。
「レーゲル様、只今戻りました。」
「無事で何よりだ。それでどんな情報が得られた?」
「カーチス軍が動かない理由ですが、カーチスは背後のハンブルク王アルフレート=フォン=レイシアを気にして中々前に進めないとのこと」
「アハハッ」
「補給線も万全な状況とは言えずフランクフルトまで進撃してくる可能性は薄いと思われます。それから・・・・・・」
「どうした?」
報告の途中でラインハルトは口をつぐむ。その後、気まずそうに言葉を絞り出す。
「これは噂に過ぎないのですが、ブダペスト王とハンブルク王が手を組み連携して我が軍とカーチス軍を包囲殲滅し機に乗じてフランクフルトを占拠するという情報が巷で流れています。既に新聞やラジオでは報道されていて・・・・・・・・・・・・」
「臣民の反応はどうだ?」
「ブダペスト王贔屓です・・・・・・・連日酒屋ではブダペスト王がいつヨーロッパの覇権を握るかで賭け事が行われているみたいです」
「噂が本当であれば退くしか道がないな」
「し、しかしフランクフルトにいる参謀長からは何があっても退くなと言われていて・・・・・・・・・」
ラインハルトは困り気味にそう言う。
「退けば敵に追撃され壊滅する。壊滅せず無事に新都に戻れたとしても補給は間違いなくゼロになる。経済力を考えてまた北伐に出れるのは3年後。・・・・・・3年の間にカーチス軍が南下してこない保証はどこにもないわけだ。参謀長の言うとおり退くという選択肢は無いし退けばお終いなんだ。理解は出来るが・・・・・・・あまりにもキツすぎる」
留まればハンブルク王とブダペスト王に挟撃される可能性があり退けば南部政府の崩壊は必須。さらに補給の問題から満足に戦えるのは僅か15日程度・・・・・・・・レーゲルは進退窮まった状況に苦虫をかみつぶしたよう表情を浮かべる。
そんな中ーーーーー
「し、将軍!! レーゲル将軍は居りますか!!?」
「私はここにいるぞ!! どうした!?」
突如、駆け込んできた兵士から告げられたのは衝撃的な状況だった・・・・・・・・・・・・・
「な、南方に配備していた偵察部隊からの報告なのですが・・・・・・・フランクフルトから東方のニュルンベルクに別部隊が展開していた事が判明しました」
「なっ!? そ、それでどこの部隊だ? 敵か? 味方か?」
レーゲルは慌てた様子で兵士に問いかける。
「分かりません。遠目からでしたが青地の旗には白馬に跨がり槍を持った女騎士が描かれていました。このような旗は我が国は元よりどこの国も使われていません・・・・・・・」
「南方の偵察部隊には引き続き任務を遂行するように言え。それからその謎の部隊が特定でき次第すぐに知らせるように」
「わ、分かりました」




