第9話 フランクフルト参謀会議
機巧暦2140年4月・フランクフルト・宮殿参謀本部
「ノイブランデンブルク軍は真っ先にベルリンを狙う可能性がありますから我が軍は機動力のある機甲師団を先遣部隊としてベルリン周辺に派遣するのはどうでしょうか?」
「ベルリンを狙う可能性というのは何処からの情報だ?」
「ノイブランデンブルク王の影響力はベルリンまで及んでおり軍勢こそは置いていないものの、ベルリン周辺の街はノイブランデンブルク王に靡いています。この状況下でノイブランデンブルク軍がやってくればあっという間にベルリンから北は完全にカーチスの手に落ちるでしょう」
「・・・・・・・・」
参謀長はレーゲルに対して機甲部隊による機動戦を提案するがレーゲルは渋る。
「何を考えられています?」
「参謀長の案は良いんだが。機甲師団での攻撃はあくまで前哨戦か短期決戦でのみ通用する戦術。長期戦になれぱ簡単に撃退されてしまう訳だが・・・・・・・・・参謀長の案をA案として長期戦の為のB案を出してもらいたい」
「レーゲル宰相、1つ良いか? 長期戦となれば1か月が限度だ。それ以上は経済的に厳しい。参謀長が出したA案を改良するのが良いと思うが」
レーゲルの言葉にナーレス=エルヴィスが釘を刺す。エルヴィスは新政権下では機甲師団長としてレーゲルから信任を得ていた。
「・・・・・・・・分かった。ならエルヴィスが良い案を出せ。参謀長それで良いですよね?」
「構わない」
参謀長の許しを得たレーゲルは話をエルヴィスに振る。
「敵は総勢70万から80万と仮定するとします。それに対して我が軍は総勢5万とします。5万で80万を破るには我が軍の兵士1人あたり10人から15人を殺す必要があり当然これは非現実的な考えです。ですから敵の戦闘兵を狙うのではなく補給戦線を徹底に破壊すべきかと思います」
「敵の集積地と輜重部隊を狙うという事か」
「はい。機甲師団の機動力であれば充分に戦果を挙げられかと思います」
「参謀長」
「分かった。エルヴィスに機甲師団を任せる。主な任務は輜重部隊及び集積地への奇襲とする。敵は大軍を率いてくる。大軍を賄う為の大規模集積地がある可能性が高いだろう。レーゲルは主力軍の3万を任せる」
参謀長はエルヴィスにそう言う。
その後ーーーーー
「本当に戦うつもりなのか? レーゲル」
「・・・・・・」
「後戻りは出来なくなるんだぞ」
会議後にレーゲルは参謀長に呼び止められた。
「仕方のない事です。私とカーチスは性格や価値観は真逆、遠からずカーチスと殺し合う事になると予想出来てましたから・・・・・・・・後戻り出来なくなるのは分かっていますから。お気になさらず。では失礼」
パタンッ
参謀長から逃げるようにレーゲルは会議室を出ていく。




