第5話 見える功績と見えない功績
機巧暦2140年3月・ハンガリー・ブダペスト宮殿自室
「お父様、1つ腑に落ちない件がございます。お聴きしても宜しいですか?」
「ラムか何だ?」
式典が終わり俺は着替えてから自室に戻り椅子に座ってくつろいでいるとラムが訪ねてきた。
(役職の件の事かな? 大体の予想はつくが・・・・・・・・)
「父上はグレイス様やフレア様を軍の要職に任命されました。グレイス様は北方戦役時代からの古参ですので要職につくのは分かりますがお父様に長くお仕えした私やレムを差し置いてつい最近仕えたばかりのフレア様が先に要職というのは・・・・・・・・・」
「誤解を招かないように先に言うけど身分どうこうという理由ではないぞ。功績が他者に対してどう映るかだ」
「他者に?」
ラムは首を傾げる。
「フレアは参謀としてオーストリア第3軍司令官に戦略を提案し見事勝つことが出来た。これは他者にとって見える功績。それに対してラムやレムの功績はどうだ?」
「基本、私達は遊撃隊として敵の側面や背後から奇襲して本軍の勝利に貢献しています」
「タギアのレム川での戦いが遊撃隊としての真骨頂だったな。俺は充分な功績だと思うんだが他者からは見えないんだ・・・・・・・・これで俺がラムらに要職を与えた場合、他者から贔屓していると思われかねないんだ」
(まあグレイスは帝国内でも評判良いし。寧ろ要職に任命されなかった事がおかしいレベルだ)
「私達はどうすれば?」
「主力の働きをしろ。正々堂々と真正面から敵とやり合えるようにしろ。それだけだ。何れはロシア=ソビエトやドイツと戦争になるだろうから来たる時の為に戦略や戦術の勉強でもしておけ。他者から目に見えて認められる功績を立てろ」
本当ならばリムの下で活躍してもらうつもりだった。リムはレム、ラムらとは違い苛烈だったがある程度のカリスマ性も危機感に対する直感力もあった。だから主力軍をリムに授けレム、ラムを左右の副将として任命して主力軍を率いる将の姿を学ばせるつもりだったが・・・・・・・・
リムを亡くした以上、レムとラムには独学でやらなければならなかった。ハッキリ言えば遊撃隊以上の兵力をラム、レムに預けるのは危険極まりない・・・・・・・つまり要職に就けるには未熟すぎるというのが俺が出した結論だ。
「分かりました。ではこれにて・・・・・・・・あと一つお聴きしても?」
「何だ?」
「これから私達はどう動きますか?」
去り際にラムが振り返りそう言う。
「北にロシア=ソビエト、南に大日本帝国・欧州本部、東にトオスマン帝国、西にドイツ帝国と俺らは四方に敵を抱えた訳だ。これらを相手に戦う事になるだろうな・・・・・・・まあ先ずは内政だな。向こうから仕掛けてこない限り手出しはしたくないからな」
「・・・・・・・・・・」
俺らは1度に敵を抱えすぎたかもしれない・・・・・・・・
 




