第56話 お飾り
機巧暦2140年2月・クルジャリ・洋館・自室
「で、何か?」
カツッ カツッ カツッ
「俺たちの今後について話したいと思ってな。異世界に召喚されてから3年余りになる。召喚された時は16歳だったのが今では19歳だ」
「何が言いたいの?」
友那はイライラしながら人差し指で床をコツコツと突っつく。俺は軍服の上着を脱ぎ宝剣を壁に立て掛け友那の目の前に座る。
「ふぅ~お互い最初の召喚された時は流浪同然の有様だったのが今では俺は皇族の一人となり友那は軍の副将だ。分からぬものだな・・・・・・・・・俺は康介と講和条約を結んだ後、大々的にブダペスト王即位の式をやる事にしたんだが、王は俺が、宰相をオーストリアのヨーゼフに据えてルーマニア軍司令官、モンテネグロ軍司令官らを方面軍司令官としてやらせようかと思っていてな」
「・・・・・・・・」
「王がいるなら王妃も必要だと考えて友那を王妃に据えたい。同意してくれるか?」
友那は首を横に振る。
「私ではなくてグレイスを王妃にしてあげて。私に王妃は務まらないから」
「グレイスは総軍の副司令官で俺の恩人でもある。そのような人材を妃として留めておくのは勿体ないし躊躇いがあって・・・・・・」
「・・・・・・・・な、なんか私だけ除け者扱いされている気がするんだけど。王妃って只のお飾りみたいなモノでしょ?」
(ここはハッキリと言ってしまうべきか)
「友那の魔術師や指揮官としての能力は三流だ。ハッキリと言うけど軍中では足手纏いでしかないのが現状なんだ。さらにさっきの友那の諸将に対しての発言で完全に信頼を失ったわけだ・・・・・・・謀反を疑う事は最大の禁じ手なんだぞ」
「でも謀反の書類はあった訳だし。このままじゃ柚希が危ないと思って・・・・・」
「俺の身を案じてくれるのは有難いし感謝している。だがその結果、友那は諸将からの反発を一身に集めてしまった。友那はこれからどうしたい? 軍に居場所は無くなった訳だし」
俺がそう問いかけると友那は俯く。
そして顔を真っ赤にして消え入りそうな声で・・・・・・・・
「ユズキノ コドモガ ホシイ・・・・・・・・・モット ユズキト イッショニイタイ」
(生きるか死ぬかの瀬戸際いれば自らの子孫を残したいと思うのは人間の性だったな・・・・・・それにしても的外れな答えだな)
「わ、分かった・・・・・・・・でも20歳で子を授かるのは早すぎる気がするから30歳くらいでどうだ?」
「ダメ!! 柚希が王様になるなら王様の跡継ぎが必要なんだよ。一刻も早く子を作らないと柚希が死んだ後どうするのよ!!」
友那は凄まじい剣幕で俺に近寄りそう言う。
「な、何も血の繋がりを重視する拘りは無いだろう? 意志を継ぐ者がこの地の王になればいい」
「この・・・・・・バカッ!!」
バシッ
「いだっ!」
思いっきり頭を叩かれる・・・・・・・・・・
「言葉じゃ・・・・・分からないなら実力行使だからね!!」
「ちょっ!! 友那!!」
「うわっ!!」
バンッ!!
床に押し倒される・・・・・・・・・・・
(コイツ・・・・・いつの間にこんな力があったんだ)
抵抗虚しく馬乗りになる形となってしまった。
スルッ
友那は恥ずかしがる事なく着物の帯を解く。ムッチリとした健康的な太股と豊かな双丘が姿を見せる・・・・・・・童顔ながら顔に垂れ下がった1本の髪が妖艶さを引き立てる。
(キレイ・・・・・・・・)
本来は彼女、神社の巫女という事もあり純潔を守らなければならないはずだが元の世界に帰れないと分かった今、純潔など関係なかった。
「生きた証が欲しいの」
白い手で俺の顔を撫でてくる。さらにキスしてくる・・・・・・・・
(抵抗しても無駄か)
俺は抵抗を止めた。今まで構ってやれなかったからこうなったんだ・・・・・・・・・・友那がこうなった原因は俺だ。
こうして俺達は1つになった。
「ずぅぅぅぅっと一緒だよ。柚希」
一通り終えた後、俺達は全裸の汗だくで床に寝ていた。友那が来ていた着物を掛け布団代わりにしていた。友那は離れまいと俺のを握っている。
「ああ」




