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機巧魔術師の異聞奇譚  作者: 桜木紫苑
第四章 鷲と鶴
176/222

第53話 リム川の戦い

機巧暦2140年2月・モンテネグロ・リム川流域





「進めェェェェェ!!!!」






「「「「うぁァァァァァァ」」」」





先に動いたのは姫路軍の右翼騎兵2万で迂回する事なく一直線にアルフレート軍右翼騎兵5千にぶつかっていく。しかし明らかに数では劣勢のはずのアルフレート軍右翼が防ぎ、さらに押しまくっていた。左翼でも戦闘が始まっていたがこちら側は押したり引いたりで膠着状態に陥っていた。





姫路軍本軍ーーーーー



「両翼が膠着状態だと!?」



「はい。右翼騎兵がかなり押されていますがギリギリ崩壊せずに踏みとどまってくれてます」



「そうなると前衛の動きが勝敗の鍵か?」



「どちらが最初に前衛を動かすかが勝敗の鍵ですね。包囲殲滅するならば尚のこと。敵の前衛と中央軍が動くのを待つべきです」



「・・・・・・・・」



参謀がそう進言するが姫路准将は黙って首を横に振る。



「考えが変わった。前衛と中央軍で敵中央軍を突破し各個撃破する」



「は?」



「味方騎兵が壊滅する前に敵中央を突破し背後と前面から挟撃してすり潰す!! 相手が動かなければ長期戦になるは必須。食糧が尽きる前に勝たなければならない。前衛及び本軍は敵中央を突破せよ!! 進めェェェェェ!!!!」






「かかれェェェェェ!!!!」






「「「うぉォォォォォォォォォ!!!!!」」」





姫路准将は全軍進軍の合図かける。前衛の高田准将が先頭となり全軍が錐の型で敵陣に向かって突撃を開始!!





アルフレート軍ーーーー



「少将!! 敵が此方に向かってきます!!!!」



「言われなくてここから見える。数に任せて押し潰すつもりだな。両翼の騎馬隊はどちらが押してる?」



「左翼は押したり引いたりで変化はなく。右翼は我が軍が押しています」 



(左翼には期待しない方が良いか・・・・・・・雌雄を決するのは右翼の動き。いや中央軍の耐久こそが勝利の鍵となるか)



俺は白馬に跨がり此方に向かってくる敵軍を全軍の先頭で眺めていた。敵軍は錐の陣で突っ込んでくる。



「実に勇敢だな。勇敢さは敬服に値するが、やり方はアホ丸出しだな。銃火器や魔術が発展した時代に捨て身の突撃をしてくるとは全くバカな連中だ!! 鉄盾部隊を前に!! 後ろに長槍部隊と銃部隊を!!」





「鉄盾隊は前にィィィィ!! 銃隊及び長槍隊は鉄盾の後ろにつけェェェェ!!」




俺の号令に部隊の司令官が応じる。鉄盾部隊が背後から出現しガチャンと重い盾を地面に突き立てる。背後に6mの槍を持つ長槍部隊が盾の上に槍をのせる。これは勢いよく突っ込んでくる敵部隊に対して有効な弧の字型防御陣形だ。





「盾部隊!! 衝撃に備えろ!!」







「「「「うァァァァァ!!!!」」」






バキッ!!!!!





敵前衛の先頭を走っていた騎馬部隊が盾部隊に衝突、さらに敵騎馬部隊の後方に続いていた歩兵部隊もぐしゃりとひしゃげるように盾部隊にぶつかる。




「長槍隊!! 敵を串刺しにしろォォ!!」





「「「オラッァァァァァ!!!!」」」





突っ込んできた敵部隊に対して長槍隊が盾部隊の隙間から槍の穂先を突き出し騎馬や歩兵を串刺しにする。盾部隊の頭上に血の雫が垂れ兵士らを赤く染める。さらに盾部隊の前には死体の山が築かれる。





「構うなァァ!! 前に進めェ!!!! 味方の死体を踏み越えろォォォォ!!!!」






「「「「うぉォォォォォ!!!!!」」」」





敵部隊は当然のように味方の死体を踏み越え盾部隊を突破しようとしてくる。




「少将!! このままでは盾部隊を乗り越え雪崩れ込んできます!! 敵は味方の死体を踏み台にしています!!」



「何の為に銃部隊を置いたんだァ!!」



「わ、分かりました」



前衛の先頭から中央に移動した俺は配下にそう怒鳴る。右翼騎兵が敵右翼騎兵を破壊し敵左翼騎兵を味方左翼騎兵と共に挟撃してこれを撃破し敵中央軍の背後を襲うまで前衛部隊崩壊を防がなければならない。



「アルフレート少将!! 前衛が押されていますが!!」




「そんなの問題ねぇから!! そのまま敵前衛の攻撃を防いでろ!!」




徐々に押され始め、弧の字型陣形の中央がへこみ始める。へこみ始めると敵前衛はさらなる猛攻を浴びせる。





(よし!! 敵の視線が中央に集まったか・・・・・・・)





スチャ!!






「反撃を開始せよ!! 右翼歩兵!! 左翼歩兵!!」






宝剣を引き抜くと魔力を流す。剣身に刻まれている魔術回路から眩い紅い光を放つ。





これは反撃の合図。さらなる攻撃の合図だ。







「「「「うぉォォォォォ!!!!!!!」」」」






今まで動いていなかった左右の歩兵が敵の左右側面を挟撃する。哀れな敵前衛は三方向から銃弾の雨を浴びる事となった。




「ぎゃァァァァァァ!!!!」


 


「三方向より攻撃を受けています!!!」




「退けぇェェ!! 退けぇェェ!!!!!!!」




混乱の坩堝に叩き落とされた敵前衛は右か左か分からずに逃走を図ろうとするも後から来る自軍の兵士らにより退路が塞がれ逃げたくても逃げられずバタバタと死んでいく。






そして戦端が開かれたから4時間後ーーーーーー




敵前衛にさらなる恐怖が襲う。





「ようやく来たか・・・・・・・・」






敵の両翼を破壊したラム率いる左翼騎兵とレム率いる右翼騎兵が駆けつけたのだ。




「後から敵がぁァァァァァ」




「逃げるんだ!!」




「ぎゃァァァァァァァ!!!!」





レムとラムが率いる騎兵は敵部隊の退路を遮断・・・・・と言うよりピッタリと蓋をしてしまった。これにより敵の背後は完全遮断され敵兵は圧迫され圧死する者も出た。





 

つまり完璧な包囲殲滅が完成したのだ!!





その後は俺らの軍が一方的に敵軍を嬲る事になり戦闘から約8時間が経過した頃、敵が白旗を掲げた。さらに後方に待機していた敵本隊も前衛が壊滅した事を受け撤退命令をだした。





3万の兵力で10万を蹂躙したのだ!!!

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