第45話 最終戦略案
機巧暦2140年2月・バルカン半島ブルガリア・ブルガス港本営
「主力軍は俺が率いるから別働隊は第3軍司令官に任せてもいいか?」
「承知致しました。ですが渓谷となると軽戦車は使えませんね。少将はそこをどうお考えで?」
「司令官は騎馬隊の指揮経験はあるのか?」
「軽戦車部隊が発足する前は騎馬隊を率いていましたから心得はあります」
夜中に俺は第3軍司令官を本営に呼び出した。俺は景気付けに第3軍司令官に酒を振る舞った。
「それじゃ3千の騎兵と2千の歩兵でムサラ山を越えブルガリア南部へ進撃出来るか?」
「少将、出来る出来ぬではなく今ある兵力でやらなければならないのです。ルーマニア、セルビア攻略はあくまでもバルカン半島攻略における前哨戦に過ぎません。ギリシャ攻略こそが本戦であり決戦です。ここぞと言う時にわざわざ配下に同意を得ていては将として頼りなく思われてしまいますよ? ご自身にもう少し自信を持たれては如何か」
「分かった。ありがとう・・・・・・ところでギリシャ軍はどう動くと思う? ある程度、動きを把握したいんだが司令官は何か情報を得ているか?」
「亀のように首を引っ込めていると聞いています。生半可な攻撃では出てこないでしょう・・・・・・・」
第3軍司令官は溜息をつく。
「硬く守りを固めていても奴らが有利になるわけじゃない。いずれは出て戦わなければならないだろうな。ギリシャ統監府の連中は良しとしてもマルタ島の本部の連中が許さないだろうよ」
「モンテネグロ軍の司令官も軍権を剥奪されたとの噂がございますが恐らく彼方此方に伏兵やら罠を張っている可能性はあるでしょう。ムサラ山は伏兵を配置するのに絶好の地。数千はいると予想しています」
「気をつけてくれ。戦死するなよ」
「分かっております。私が死ねば少将はヨーゼフ様に合わせる顔が無くなりますから・・・・・・・・少将の為にも死ぬわけにはいきません」
第3軍司令官は既に覚悟を決めいているようだった。ただそれは死への覚悟ではなく必ずや生きて勝利を収めるという覚悟だ。
翌朝ーーーー
「フレア決まったぞ。別働隊はオーストリア第3軍司令官が率いて俺は主力軍を率いる。別働隊の副官はフレアに任せてもいいか?」
「主力軍の副官は誰に任せるのだ?」
「主力軍は副官をグレイスと友那に任せてブルガス港の留守はルーマニア軍司令官に任せようと思う。さらに主力軍は騎兵を1万ばかり連れていく。これらはラムとレムに率いさせる。これで良いか?」
「モンテネグロの南方は平野が少なく湿地が広がる地域。装甲部隊ではなく騎馬隊にしたのは見事だ。拙はアルフレート公の意に賛同する。直ぐに全軍の諸将らにその旨を命じて出撃させるといい。拙も出撃の準備をしよう」
翌朝、俺はフレアのもとを訪れた。俺の考えを彼女は目を瞑り聞き聞き終わると称賛した。
「頼む」