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機巧魔術師の異聞奇譚  作者: 桜木紫苑
第四章 鷲と鶴
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第42話 印綬の移譲

機巧暦2140年2月・奴隷商館・地下牢



「商人、アンタが薦めてくれた商品は中々にクセがありそうだが気に入ったから買ってやる。金は幾らだ?」



「これは気に入ってもらえて何よりです。お代は頂戴致しませんからご安心下さい」



フレアを連れて戻ってきた俺は奴隷商人に代金を払おうとしたが奴隷商人は素っ気なくそう言う。



「えっ? 本当に良いのか?」



「はい。勇者様はリム、ラム、レムとこれだけの奴隷をお買い上げになったのです。今まで1度このような買い方をされる方は居りませんでした。ですから特別に1人くらい無料に致しますよ」



「それは助かる」



「勇者様、またのお越しをお待ちしております」



「ああ。ラム、レム、フレア帰るぞ」



「「分かりました」」



「・・・・・・・」



奴隷商人に一礼すると俺達は地下牢を後にする。




ブルガス港・本営ーーーー



本営の陣屋に戻ってきた俺はフレアと二人きりで話す為、配下の臣や護衛を陣屋から追い出し扉を閉めた。さらにフレアには軍服に着替えさせた。黒い軍服に濃紺のコートを羽織らした。



「先生、これから俺らはどう動けば良いのかご教授願いたい」



「・・・・・・ラフな感じでいいぞ。アルフレート公にその口調は似合わない。却って相手に疑念を抱かせかねないぞ」



「そうか。ならラフにさせてもらう」



俺の言葉にフレアは頷くと目線を机上にある地図に移す。そしておもむろに筆を手に取ると地図に書き込み始める。状況把握のため俺の説明を聞きながらオリンピア戦域から北州での戦や進軍経路の全てを地図に書き記したフレアは一息つく。



「僅か3か月でこれだけの勢力を拡大させるとは中々に強いのだな」



「ただ運が良かっただけだ。敵はろくに連携も出来なかったようだし司令部のギリシャ統監府も俺らを潰す絶好のチャンスを逃す始末だ。どうだ? このまま全軍を持って西進するのはアリか?」



「この地図に書いた通りにすれば何とかなる・・・・・・・・この協会軍が予定より早くギリシャに到着しなければだが」



フレアは自信なさげにそう言う。



(協会は俺が違法的に魔術を身に着けたとして討伐の機会を窺っていると聞いている。帝国からの支援が無い今、協会にとっては絶好のチャンスと言う訳か)



「どういう策なんだこれは?」



「全軍を二手に分けて本軍をモンテネグロを南進させ、別働軍でブルガス港からブルガリアにある統監府を北から襲いかかる。そうすれば統監府の連中はモンテネグロに逃げる」



「なるほどモンテネグロに逃げてきた敵本軍を俺ら主力が叩くという事か。間に合えばブルガリアの別働軍と挟撃出来るな」



(これをやるにしても連携出来るかどうかが問題だな。もっと言えばブルガリアの統監府軍がモンテネグロに逃げてくるとは限らない。オスマン帝国に逃げられれば追うのは不可能だし。モンテネグロに逃げてきたとしても主力軍が迎撃出来るだけの力があればだが・・・・・・・・まあいっそフレアに指揮を任せてみるっていうのもアリか) 



「よしアンタが指揮を執れ。この策の詳細はフレアにしか分からないからな」



「拙が指揮を執るのはいいが将兵が従うと思うか?」



「ならこれを預ける。これがあれぱ将兵はイヤでも従うだろうな」



俺は机の脇に置いてあった木製の小箱をフレアに渡す。



「これは?」



「帝国陸軍少将の印綬だ。全軍を指揮する権利をフレアに譲るから好きなようにやってみろ。策はフレアの頭の中にある。俺が指揮すれば誤差が出るだろう?」



印綬を渡した事により軍の賞罰もフレアに移譲する事になり、軍の命令を違反した者や従わない者は容赦なく裁く事が出来るのだ。

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