第28話 ルーマニア軍の降伏
機巧暦2140年1月・バルカン半島ブルガリア・ソフィア
「降伏致します・・・・・・」
「ああ」
夜戦で壊滅的な被害を受けたルーマニア軍は日が昇ると武器を捨て白旗を挙げアルフレート軍に投降した。
「降伏の条件は? 降伏するからには身を粉にして働くのだ。そうでなくては降伏とは言えない。降伏の対価として何か寄こしなさい」
「・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・待てグレイス」
跪く北州軍司令官の前にグレイスは高圧的な態度をとる。
「ゆ、ユズキ少将、これは失礼・・・・・・しかし降伏してきた者に情けなど不要。隷属させるべきです」
「グレイスは下がれ、俺がこの方の処遇を決める。他も下がれ」
「「「御意!!」」」
事実上、我が軍において初めての捕虜だ。グレイスは捕虜の扱いが分からずとりあえず高圧的にしていれば良いという考えなのだろうか・・・・・・・・・俺はグレイスや配下を下がらせ、ルーマニア軍司令官と二人きりになった。
「先程はうちのグレイスが失礼した。申し訳ない。さぁ司令官、席へお座り下さい」
「あ、ありがとうございます・・・・・・・」
「さて・・・・・・聞きたい事は山ほどあるが、まず何で降伏しようと思ったんだ?」
司令官を自分の隣の椅子に座らせる。
「夜襲による部隊壊滅と本営軍の撤退からこれ以上の戦闘は不可能と悟り白旗を掲げました」
本営・・・・・・? 本営軍はルーマニア軍司令官では?
「軍を指揮していたのは誰なのだ?」
「最初は私が指揮を執りましたが後半は館林准将が全軍指揮を執っていました・・・・・・・・」
「館林准将? だ、誰だ? その方は」
「ギリシャ統監府付きの武官で榊原康介海軍少将の重臣にございます。アルフレート様の来襲を受け統監府は館林准将に5千を授けセルビアのレスコバツに配置していたのです」
「俺がセルビアからではなくバルカン山脈を越えた事によって計画が崩れ館林軍がルーマニア軍を助けるために合流した・・・・・・という事か?」
俺がそう言うとルーマニア軍司令官は頷く。
「館林軍は開戦するや早々と陣を引き払い撤退しました。助けるためというより一応参戦したという大義名分が欲しかったのでしょう」
「・・・・・・これから如何するつもりだ?」
「降伏した以上、死ぬ勢いで先陣で奮戦するつもりです。どうか私たちをアルフレート様の思うままにお使い下さい」
「君らを一軍に加えるつもりだ。先陣を切らせるわけにはいかないがな。それより補給基地とかは無いのか?」
俺はコップの水を飲み干すとそう言う。ギリシャに深入りする以上、補給基地を確保しなければマズい。
「このソフィアから東に行った場所にブルガスという港があります。そこで宜しければ補給基地として使うが宜しいかと・・・・・・・」
「分かった。使わせてもらう」
その後、降伏させたルーマニア軍を自軍に吸収し部隊をまとめると俺は東海岸あたりにあるブルガスに向かった。




