第27話 ソフィアの戦い
機巧暦2140年1月・バルカン半島ブルガリア・ソフィア
翌朝、ルーマニア軍・館林守備軍は全軍《2万5千》で渡河を始めた。ルーマニア軍司令官は全軍指揮権を館林准将に引き渡し、前線司令官として戦線に加わった。
「進めぇェェェェェェェ!! 敵軍は少勢にすぎん!! 2万5千をもって押し潰せェェェェェ!!!!」
「「「うぉォォォォォォォォォォォォ!!!!」」」
館林准将の作戦通り全軍をもって押し潰す・・・・・・かのように思われたが川が思ったより流れが速く、さらに対岸にバラバラに上陸したことから隊列が整う前に敵軍からの攻撃を受ける始末だった・・・・・・・・・
館林本営ーーーー
「准将、策を変えるべきです。川幅が広く流れが速い。これでは対岸に上陸しようとしても不可能です。上陸出来たとしても隊列を組む前に敵軍の攻撃を受けてしまいます。これ以上、イタズラに兵士を失うわけにはいきません!!」
「民間から戸板を徴収し川に並べ筏にしろ。夜半に再度上陸する。夜半になれば流れも落ち着くみたいだしな」
「・・・・・・・・・」
「まあ、上陸した後の判断は司令官に任せる」
「分かりました・・・・・・・」
その後、ルーマニア軍司令官は民家から戸板やトタンを強制徴収し夜を待った。
そしてーーーーー
「かかれェェェェェェ!!!!」
「「「うぉォォォォォォォォォォォォ!!!!」」」
夜陰に乗じての上陸は見事成功する。
「全軍を二手に分けて敵軍を挟撃しろ!!」
前線で銃剣を握って指揮するルーマニア軍司令官はそう叫ぶ。
しかし思ったようにいかないのが戦争で・・・・・・・
ズダダッ!! ズダダッ!! ズダダッ!!
「ヴァ!!」
「ギャァァ!!」
「て、敵襲!! 敵襲!! 退けぇ!!」
「ど、何処から撃ってきてるんだ!!」
「わ、分かりません!!」
先に上陸を成功させた部隊は左右前後から断続的な銃撃砲撃を受け混乱状態に陥った。さらに後続隊も奇襲を受けているらしく断末魔や怒声が聞こえてくる。
「し、司令官!! ご無事ですか!? 司令官!!」
「私は無事だ!! な、何が起こってる!?」
「敵が四方から撃ってくるのです!! 暗闇にも関わらず命中率が高く兵士らの殆どが頭を撃ち抜かれてます!!」
「兵士らには黒い軍服を着せてるはず・・・・・以外と目立つのか・・・・・・・・」
付近の岩石に身を隠した州軍司令官はパニクりながらも状況把握に努めた・・・・・・・・
「軍司令ぇ!! ほ、本営が・・・・・・!!」
「どうした?」
「本営がもぬけの殻です。付近にいた兵士によれば館林准将は戦が始まって早々、僅かな供回りと逃げた模様!!」
「はぁ!? 准将はルーマニア軍を見捨てたのか!?」
「お、恐らくは・・・・・・・・」
一人の偵察兵からそう聞いた州軍司令官は肩を落とした。
「・・・・・・・・降伏するぞ」
「何故です? 我が軍は総勢2万。まだ戦えます!!」
「これ以上の戦闘は無駄だ。敵はあちらこちらに小隊を配置して神出鬼没に私たちを攻撃してきている。暗闇で視界のきかないようでは一方的に被害を受けるだけだ。要らぬ損害を出さない為に・・・・・・降伏する」
「降伏ではなく撤退すれば良いのでは?」
「背後には川、さらに敵も伏兵を置いてるはずだから撤退は不可能だ。味方に捨てられた今、私たちが生きる道は降伏しかないのだ」
「そ、そんな・・・・・・・・・」
「夜明けと共に武器を捨て白旗を掲げろ」
ルーマニア軍司令官は自分の運命を悟り苦笑いしながらそう言う・・・・・・・・




