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機巧魔術師の異聞奇譚  作者: 桜木紫苑
第四章 鷲と鶴
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第26話 根性論

機巧暦2140年1月・バルカン半島ルーマニア統監府



「軍司令官!! ギリシャ統監府より出撃命令が!!」



「ギリシャ統監府から? バルカン山脈やセルビアにはギリシャ統監府からの直属軍がいるのであろう? 私らは出撃しなくても良いのではないか?」



「いえ事態が変わったらしく敵軍はセルビアから侵入してくるはずと考えて直属軍をセルビアのレスコバツに配置していたみたいで・・・・・その思惑が外れて敵軍はバルカン山脈を迂回せずに直接越えてきたみたいです」



「ルーマニア軍で対応出来るだろうか・・・・・・・」



ルーマニア軍司令官は不安になりながらもギリシャ統監府からの命令は逆らえないため州軍一個師団《2万》をバルカン山脈麓の西側にあるブルガリアのソフィアに出撃した。





バルカン半島ブルガリア・ソフィアーーーー



「うぅ~・・・・・・・寒い・・・・・・・」 



「兵士らを焚き火あたらせろ。これではろくに戦えないだろ」



「報告です!!」



「?」



「何だ?」



ソフィアに陣をひいたものの敵の姿が見えずルーマニア軍司令官は各地に斥候を放っていた。



「斥候からの報告で、川の対岸に敵が現れたとのこと!!」



「敵の規模は?」



「歩兵部隊が約1万のみです。ルーマニア軍だけで踏み潰せる数かと」



伝令兵は勝利を確信し興奮してそう言う。



「各方面に斥候を増やしてくれ、何処かに潜んでるかもしれない・・・・・・・・・」



「御意」



ルーマニア軍司令官は伝令兵にそう伝える。



「司令官、雪山を越えてきたのなら歩兵部隊1万でもおかしくないと思います。戦車も騎馬も雪山を通れませんし、仮に戦車や騎馬を連れて雪山行軍すれば大半を失っていてもおかしくないと思いますが?」



「参謀、あの敵軍の指揮してるのは誰だ?」



「アルフレート=フォン=ユズキと聞いてます・・・・・・・」



司令官の問いかけに参謀はそう答える。



「数々の戦場で勝利を自ら掴んできた英雄・・・・・・・血塗れになりながらも戦う姿から灰色の亡霊(グレイゴースト)と呼ばれる奴だ。時には大胆となり、時には慎重になる。今回は慎重になってるはず・・・・・・罠を幾重にも張り巡らしてる。警戒は怠るな。突然、背後から現れることもある」



「分かりました司令官・・・・・・・」






その後ーーーー



「寒さで士気が下がる前に渡河して敵軍を撃ち破るべきです。寒いのは敵も同じなはず」



「准将、川を渡るのは結構だが真冬の川を渡河はどうかと思います」



救援としてセルビアのレスコバツから駆けつけた館林准将と作戦会議を開いていた。しかし地方情勢を把握しているルーマニア軍司令官とギリシャ統監府勤めの一軍司令官とでは考えが真逆だった。敵は山を越えてきて疲労困憊な上に少勢だから力に任せて攻めれば勝利を得られると考える館林准将・・・・・・・・・それに対し敵は少勢だが少勢だからこそ警戒すべき、さらに山を越えて敵地に乗り込んできた以上それなりの覚悟があるから、この一戦で破ったとしても抵抗は続くはずと考えるルーマニア軍司令官・・・・・・・・・



「寒いのは敵も同じ!! この戦、極寒に打ち勝った者が勝利を得られるのだ!!」



「館林准将、根性論で勝利を得られると思いですか?」



「君は降将の身。我らギリシャ統監府に従うべきだと思うが? どうだ?」



あれこれ意見してくるルーマニア軍司令官に対して館林准将は睨みつける。



ルーマニア、ブルガリア、モンテネグロ、セルビアの各軍は元々、ギリシャ統監府と対立していた勢力で榊原軍や新田軍らが武力をもって降伏させたのだ。その後、バルカン半島の統治が榊原に任せられると彼は降伏した各州の軍を地方軍として配置し自治も認めていた。そんな経由があってかギリシャ統監府軍と各軍の間には上下関係が激しかった。



「・・・・・・・わ、分かりました。館林准将の指揮に従います」



「よろしい」



作戦は全軍で渡河し敵軍に奇襲を仕掛ける事に決まった・・・・・

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