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機巧魔術師の異聞奇譚  作者: 桜木紫苑
第四章 鷲と鶴
145/222

第22話 バルカン山脈

機巧暦2140年1月・バルカン半島・バルカン山脈



「少将、この山を越えるんですか?」



「ああ、これを越えてブルガリアやギリシャに雪崩れ込むんだ」



目の前に広がるのは、山ァ! 山ァ! 山ァ!! 冬ということもあり山頂あたりには雪が積もっている。



「やはり西に迂回してセルビアから攻め入るのが良いと思うけど・・・・・・・・・」



「いや既にセルビアには敵が展開してる噂がある。わざわざガチガチに固めた敵軍に正面からぶつかる事もないだろ」



「山を越えた頃にはどれだけの兵が残るか・・・・・・雪山なので滑落もありますし」



オーストリア軍の第3軍司令官と魔導航空戦隊副将及び第2航空戦隊司令官・グレイス=シェフィールドは難色を示す。



「緩やかな場所を選んで進軍するつもりだから安心してくれ・・・・・・」



「・・・・・・・・・・」



「・・・・・・・・・・・・」



山を崩して谷を埋め道をつくり、橋を架けて川を渡り、穴を空け道をつくるといった三国時代末期の魏将・鄧艾(とうがい)の蜀漢征伐のような進軍になりそうだ。





その後ーーーー





「な、雪崩だぁァァァァァ!!」





「トラックが・・・・・・・・・」






「補給部隊を先に行かせろ!! 歩兵はその後に!!」






「少将!! 迂回しましょう。この先に拓けた場所があると聞きますから」






やはり当たり前だが冬の山越えは困難を極めた。滑落する者、雪崩に巻き込まれる者、遭難する者が後を絶たなかった。





そしてーーーー





「少将・・・・・・・だ、脱落していいですか?」



「・・・・・・・・・・」



「少将、限界です。寒さで頭が・・・・・おかしくなりそうなんです」



「誇り高き我が帝国魔導航空戦隊がこのザマでどうする!!」



グレイスが寒さに堪りかねて弱音を吐く。



「し、しかし少将、気合ではどうにもならない・・・・・・・」



「・・・・・・・・・ならこれを使え」



「これは?」



「今に分かる」



俺は懐から紅いブローチを取り出すと魔力を流す。



「へ? か、体がポカポカする」



「さ、寒くない・・・・・・」



「・・・・・・・っ!?」



グレイスの後にいる兵士らも口々にそう呟く。



「これは魔力を熱に変換して伝えるモノだ。俺自身が寒がりだから買ったんだ・・・・・・・」



「なるほど・・・・・・でも自身にしか熱は伝わらないはずでは?」



「魔力によって伝えられる範囲が変わる代物らしくてな。強力な魔力であるほど広範囲に伝えられるわけ。対人用で人間を内側から暖めるモノだから・・・・・・雪が熱によって溶けるなんて事はないから心配するな」



「なるほど」



いわゆる自軍バフかけという奴だ。俺がいる範囲内に魔力変換された熱が常に発されているのだ。



「さぁ、先を急ぐぞ」



「分かりました」



俺たちは再び行軍を開始した。

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