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機巧魔術師の異聞奇譚  作者: 桜木紫苑
第四章 鷲と鶴
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第16話 戦後処理

機巧暦2140年1月・オーストリア=ハンガリー帝国・第3軍



「ついに、ですね」



「うむ・・・・・・・・・」



第3軍司令官は参謀と共に重戦車に乗り込む。



「ところで司令、何で司令自ら重戦隊に? 重戦隊は最初に敵にぶつかる部隊。司令が戦死でもされたら・・・・・・」



「無線が発達した今、確かに指揮官は後方で指揮を執った方が遥かに安全だ。でも数秒単位で変わっていく戦場は無線からの情報では分からない事もある・・・・・・だから指揮官として騎兵時代よろしく先頭に立って戦う!!」



「・・・・・・・・・そう言えば第1軍司令官も自ら銃剣を握って戦っているとか」



「なるほど・・・・・・・・なら私が先頭立って戦ってても何も言われないな」



その後、先頭に重戦車部隊、砲兵部隊、歩兵部隊と続き、歩兵部隊の周りを軽戦車部隊で囲むように隊形をつくる。







そして夜ーーーー





「ーーーーーっ!!」




第3軍司令官は腰の長剣を抜くと前に振りかざし進軍の合図をかける。重戦車部隊を先頭に全速力で進軍を開始する。




ーーーーザルツブルク・オーストリア軍本営


「ヨーゼフ大将、只今、無線にて第3軍司令官が進軍を開始したと報告がありました」



「そうか・・・・・・ついに動き出したか」 



「これで後戻りは出来ませんね。第3軍を信じるしかありません」



「・・・・・・・・・うむ」



無線兵から報告を受けたヨーゼフは特に何も言わず頷くだけだった。



「ついに最終段階ですねヨーゼフ大将」



「・・・・・・・ユズキ少将か」



ユズキはいつでも出撃出来るよう黒い軍服の上から白いコートを羽織り両腰には銀色の愛刀を差していた。刀と言っても極東の芸術的な造りではなく装飾を省いた無骨な片刃のブレードと言ったところだ。



「敵軍の周囲に散兵を撒いておいたので敵軍も第3軍の侵攻に気付いたとしても簡単には動けないでしょう」



「散兵?」



「俺の一個師団の半分余りを事前に散兵として敵軍のあちらこちらに撒いているんですよ。微力ながらお役に立てればと思いまして・・・・・・・・散兵の配置はこのようになっています」



「うむ」



ユズキは地図を見ながらそう言う。



「ヨーゼフ大将、一つお聴きしたい事があります」



「な、なんだ?」



「戦後処理をどうなさるおつもりで? 勝てば当然ながらハンガリー側についた文官武将や王族貴族をどう扱うかが問題となりますよね?」



「処罰するのが通例だろうな」



「敗者を嬲るのは時代遅れかと思います。ここは財産没収にして平民に落とすだけで十分かと思います。殺す必要はありません」



「な、なんだと・・・・・それで奴らがいつ私の命を狙って襲撃してくるか分からないではないか!?」



ヨーゼフはユズキの言葉に目を剥く。



「恨みを買うような事をしなければ命を付け狙われる事はないと思います。敵側も反乱を起こしたとしても財産没収されているので碌な刺客も雇えないですから暗殺される心配はないかと思います」



「・・・・・・・・そ、そうか」



ユズキからそう言われるもヨーゼフはわだかまりが溶ける事はなかった。一応、ユズキの前では敵側の王族貴族は許すという事で決まった。

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