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機巧魔術師の異聞奇譚  作者: 桜木紫苑
第四章 鷲と鶴
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第13話 視野は広く

機巧暦2140年1月・オーストリア=ハンガリー帝国レオーベン



「ヨーゼフ大将、必勝の戦術を思いつきました」



「・・・・・・・・か、勝てる作戦なんだろうな?」



ヨーゼフは俺に疑心の目を向けてくる。 



「多少のリスクはありますが・・・・・・・・」



「言ってみよ」



「その前に大まかな部隊編成の資料はありますか?」



「あ、ああこれになるが」



ヨーゼフは俺に編成表と配置図を渡してくる。




ーーオーストリア軍編成表ーー


第1軍・・・・歩兵部隊


第2軍・・・・砲兵部隊


第3軍・・・・軽戦車部隊


第4軍・・・・歩兵部隊・重戦車部隊


第5軍・・・・軽戦車部隊


第6軍・・・・本営《歩兵・砲兵》




「・・・・・・・・第4軍が地図に書かれてないが?」



「第4軍は開戦早々にハンガリー軍からの夜襲を受けて壊滅した。残存部隊は各軍に振り分けて編入させたんだ。夜襲で壊滅しなければ第4軍がいち早くハンガリーを落とすことが出来ていたのに!!」



「・・・・・・・・・・作戦内容を話しても宜しいですか?」



ヨーゼフは頷く。



「作戦名は解除作戦として堅く閉ざされた扉を無理矢理こじ開けるような戦いになります。こちらをご覧下さい」



「・・・・・・・・・・うむ」



俺は地図に矢印やら線を書きながらヨーゼフにそう言う。



「この作戦で鍵になるのはアイゼンシュタットにいる第1軍の動きで・・・・・・・・・」



「ん? 第1軍を撤退させるのか!?」



「はい。撤退といっても敗走によるものではなく、敵の攻撃を受けつつゆっくり軍を後に引き下げていくやり方になります。第1軍は歩兵部隊なので柔軟な動きが出来ると思います」



「・・・・・・・・敵の一軍を引き付けるということか」



「はい。第1軍を囮に敵の一軍をオーストリア領内に引きずり込みます」



「なるほど敵の一軍一軍をそのやり方で各個殲滅していくということか!!」



「いえ殲滅が目的ではありません」



「え!?」



俺の言葉にヨーゼフは唖然とする。いちいち殲滅なんてやってたら兵力が幾らあっても足りない。



「アイゼンシュタットにいる第1軍が後退しながら敵の一軍を領内に引きずり込めば、ガちチガチに固めているハンガリー領の国境線に綻びが見え始めるでしょう。まあ綻びというより軍団と軍団の間に間隙が出来ます。その間隙に機動戦力となる第3軍をねじ込みハンガリー領内に侵攻させます」



「第3軍の軽戦車部隊を?」



「はい。機動力で素早くやらなければなりませんから。歩兵部隊でノロノロやってたら敵軍に囲まれて殲滅されますので」



「なるほど・・・・・・・戦車部隊を主力と位置づけていたがそのような機動力とか全く眼中に無かった・・・・・・・・」



ヨーゼフは関心したようにそう言う。



「視野は広く持つべきです。一軍の将帥なら尚のこと・・・・・・失礼ながらヨーゼフ大将のご出身は?」



「私は貴族の出身でな。まあ貴族と言っても王宮から追い出された没落身分ではあるがな。革命やら他国からの侵攻による国の危機に見過ごせなくて有志を集めて一旗挙げたわけよ」



「なるほど・・・・・・・・」



貴族出身ということは軍事に関しては素人・・・・・・という事か。いやある程度の軍才はあるかも。



「ところでユズキ少将のご身分は?」



「少し前まで貴族で、今は皇族の身分になってます」



「え、貴族出身なのに軍事を?」



ヨーゼフは驚いたようにそう言う。貴族は血や死といったモノを極端に嫌う傾向があり、血や死と隣り合わせの軍事に関しては身分の低い者や卑賤の出の者を指揮官として命じ対応にあたらせていた。しかし近年はその傾向は無くなりつつある。



「今は貴族ですが元は孤児なんで・・・・・・・・」



「孤児が今や皇族か・・・・・・さぞや大変な苦労だっただろうが・・・・・・相当な強運を持った成り上がり者だな」



ヨーゼフは微笑みながらそう言う。

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