第8話 親友と最悪な状況下での再会
機巧暦2140年1月・ドイツ帝国フランクフルト・宮殿客室
「プッハァ!! ウメぇ!!」
「・・・・・・・・・・・」
「美味い料理に美味い酒!! こりゃ最高だねぇ!!」
「で、うちに何の用で来たんですか?」
「冷たいねぇ~ こっちは一応、使者として来てるんだ」
新田は酒を飲みながらそう言う。それに対して俺は渋い表情を浮かべていた。何か知らないがいきなり宮殿に来て使者としてアイネスに謁見したいと言いだしたのだ。臣下らは慌ててアイネスに取り次いでいる。その間の接待を俺に押しつけてきたのだ・・・・・・・・・
「要件は何なんですか?」
「相互不可侵条約を結ぼうと思ってね。大日本帝国・欧州本部とドイツ帝国はこのままいけば一触即発となる。当然ながら我が国も貴国もそのような事は望んじゃいない」
よく言うな~ ドイツと同族のオーストリア=ハンガリーを侵攻しておきながら・・・・・・・・・・
「なるほど・・・・・・・・」
俺は呟くとテーブルのコーヒーカップを手に取ると口に運ぶ。
その時ーーーーー
バァン!!
「ユズキ様!! 急いで広間前の廊下まで来て下さい!!」
「客を接待しているから無理なんだが?」
「貴方の配下が刺されて!!」
「な、何!?」
扉をノックもせずに乱入してきた近衛兵は俺にそう言う。新田は特に気にもせず酒を飲んでいる。
「早く来て下さい!!」
「わ、わかった。新田殿、申し訳ないが少し席を外す」
「分かりました」
新田は眉一つ動かさずそう言う。
宮殿・広間前廊下ーーーー
廊下には人集りが出来ていて俺は人をかき分けながら前へ進む。
「うっ・・・・・・・」
「ユズキ少将・・・・・・・・・」
「こ、これは・・・・・・?」
人混みを抜けた先には一面血だらけの床が現れた。そして血を流して倒れている人に目を向ける。
「・・・・・・・・・う、嘘だろ」
倒れていたのはリムだった・・・・・・・・・・俺は急いで駆け寄ると抱きかかえて自分の膝の上にのせる。胸から腹部にかけて斬られている。まだ息はあるが出血の量からして助からないだろう。
「しっかりしろ!! リム!!」
「う・・・・・・・お、親父ィ・・・・・・・」
「な、何があったんだ」
「や、奴が・・・・・・・俺らをバカにし、しやがって・・・・・・」
「奴?」
「す、すまねぇ・・・・・さ、先に逝かせて・・・・・・ヴァルハラで・・・・・・・ま、また・・・・・・・・・・・」
苦しそうに血反吐を吐きながらそう言うと事切れた・・・・・・・・
「うぅ・・・・・・・・・リム!!」
「殺るつもりは無かったんだがな」
・・・・・・・・っ!?
リムの亡骸を泣きながら抱き締めていると後から声が聞こえる。急いで振り返ると・・・・・・・海軍服を来た康介が立っていた。康介の隣には知らないピンク髪の少女がいる・・・・・・・
「こ、康介・・・・・・・・まさか」
「久しぶりだな柚希。為るように為っちまうんもんだな・・・・・・・まあ俺らを愚弄した罰ではあるが」
ピンク少女の右手に握られているメカメカしい戦斧には血がベットリとこびりついている。
「・・・・・・・くっ!! テメェら見せもんじゃねぇぞ!! さっさと解散しろ!!」
「ヒィ!!」
「・・・・・・・・!!」
「わ、分かりました」
俺は周りに居る野次馬を怒声で追い払う。野次馬はギョッとしながら去って行く。広間内からも覗き見していた奴もひっそりと扉を閉める。
「さて邪魔は居なくなったわけだが・・・・・・話を聞かせてもらおうか。大日本帝国・欧州本部海軍少将の榊原康介」
「フッ」
周りの人が居なくなると康介の目つきが変わる。友好的な瞳が敵対心を孕んだ瞳へと変貌した・・・・・・・・
 




