第7話 成長
機巧暦2140年1月・イタリア王国マルタ島海軍鎮守府・執務室
「東方計画を進める・・・・・・だと!?」
「うむ。やはり勢力拡大する事が生き残る道だと思ってな」
「お、俺の書状を読んでないのか!?」
「読んだよ」
「・・・・・・・くっ、アンタ実は戦争したいだけなんじゃねぇのか? 民族解放や自治、民草の安寧の考えは何処へいった!?」
東方計画の続行を知った榊原はマルタ島の鎮守府に乗り込んだ。執務室の椅子に座っている新田に対して怒鳴り散らしていた。
「そのような理想主義は捨てたのだ。やはり勢力拡大してドイツやフランス、ロシア=ソビエトが手を出せないレベルの勢力が必要と判断したのだ。さらに支那を手に入れれば安寧が来るだろう・・・・・・・」
「俺はアンタの理想主義を支持していたんだが? アンタ・・・・・・昔はそんな奴じゃなかったはず、何があったんだ?」
「現実に目を向けたまでだ。欧州は勢力拡大に手詰まり感がある。ドイツを潰せば連合王国との交易路が拓ける。だが榊原の言う通り今のドイツは窮鼠だ。噛みつかれては色々と面倒だ・・・・・・・・」
「なるほど東のが侵攻し易いから・・・・・ということか。支那とは貿易協定やら相互不可侵条約を結んでお互い協力した方がメリットになるだろ? わざわざ無抵抗の奴に銃口を向ける必要はねぇだろ!!」
「榊原が言うのは支那が1つの統一国家であればの話だ!! 今の支那は四分五裂の状況だ。憎き大日本帝国の本国に味方する奴らもいればドイツと貿易協定を結んでいる奴らもいる一枚岩ではないのだ。君の言うような事が出来ればとっくにやってる」
榊原の言葉に新田は語気を荒げる。
「新田中将、理想を忘れようが、現実を見ようが構わない。でもこれだけは忘れないで欲しい。民草や官民が日夜頑張ってくれてるからこそ俺らは戦争が出来る。それだけは頭に入れておいてくれ・・・・・・・民草の支持無しでは今の欧州本部はないと思え」
「ふっ・・・・・・・ずっと青二才と思っていたが立派に成長しているな。やはり君にバルカン半島を預けたのが正解だったか」
「はっ? な、何だよいきなり」
「いや・・・・・・・・ふと思ったことを口にしたまでだ。気にするな」
今まで自分で考えようとしなかった榊原の成長具合に新田は少し微笑む。
「約束しよう。支那を攻略したら内政に集中する。地盤が固まり次第、総力を挙げて大日本帝国を潰す。それでいいか?」
「ああ」
その頃、先遣部隊として派遣された清王朝の遺臣こと劉季、劉徹、劉且、劉宋ら四個師団《8万》がアフガニスタンの都市国家を次々と降伏させ新疆に迫ろうとしていた。