第26話 一件落着
機巧暦2140年1月・ドイツ帝国ヴュルツブルク
「撃て!! 撃て!!」
「カーチス大将!! 城内から応戦してきました!!」
「何? やはり罠だったか・・・・・装甲部隊を崩れた城門から城内に突撃させろ!!」
「分かりました」
轟音が鳴り響く中、カーチスは軍に集中砲火を行うよう命令を出す。ちなみにレーゲル率いる第一師団は傍観していた。味方の部隊に砲弾ぶち込んだとあらば軍法会議にて死刑は確実だったからだ・・・・・・・・
2時間後ーーーー
「カーチス大将!! 城内より使者が来ていますが」
「ヘルマンの使者か? アハハやっと降伏しに来たか!! まあ助命嘆願されてもその場で斬首だがな!!」
「・・・・・・・・カーチス大将、ヘルマンからの使者ではなく。陛下からの使者にございます」
「な、何!? 陛下からの使者・・・・・・!?」
配下の言葉にカーチスは首を傾げる。
「陛下からの使者なら会わなければならないか」
「ではここにお呼び致します」
「あ、ああ」
そしてーーーーー
「久しぶりだなカーチス大将」
「げっ!! れ、レイシア・・・・・・」
「ビビることはあるまい。君は私より階級が上だ。堂々としてくれ」
カーチスは口をあんぐりと開ける。まさかレイシアが来るとは思わなかったのだ。
「・・・・・・・レイシア、お前は東プロイセンの屋敷に引き篭もっていたのではないのか? いつフランクフルトに来た?」
「ふふっ、つい最近さ。陛下から泣き言の書状を貰ってね。それで何事かと思って来てみたのさ」
「相変わらずフリーダムだな・・・・・・・まあそんなことはどうでも良い。何の用で来た?」
「バカ弟子から書状を貰わなかったかね?」
「ああユズキか・・・・・・まあ送られてきたが?」
「・・・・・・ならヘルマンが死んだことを知っていながら城内に砲弾を撃ち込んでいるのか?」
「・・・・・・・本当に死んだのか?」
カーチスは身を乗り出してレイシアに聞く。レイシアは面倒くさげに頷く。
「死んだも何も私が策謀して殺したのだよ。奴に反乱を起こさせて私が南軍府の軍を率いて狩ったまでのこと。驚くことはあるまい」
「南軍? 南軍は確か海軍大臣が握っているはずでは?」
「上手く騙して兵権を陛下に返上させたのだよ。大臣は自領に引き篭もってるよ」
「・・・・・・・・・そ、そうか」
カーチスは見る見るうちに青ざめていく。陛下の一族であるレイシアが嘘をつくはずがないからだ。さらにレイシアの性格からしてやりかねないのはカーチスも理解していた。
「さて君はフランクフルトに砲弾ぶち込んで同胞を殺した訳だが・・・・・・・・・」
「そ、その罪は死を以て償う。軍法会議にて死刑にしてくれて構わない」
「ハァ・・・・・・全く君は状況が見えていないのだな」
「はっ?」
「陛下から此度の騒動・・・・・まあ同士討ちの件は不問に致すと言っていてな。私も戦場において疑う心は大切だと思ってる。それと君は数少ない帝国の忠臣だ。今失っては敵に利するだけだ」
「ありがとうございます」
「礼なら私ではなく陛下に言いたまえ」
レイシアはそう言うと去っていく。そんなレイシアを見ながらカーチスは呟く・・・・・・・
「アイツの何処が無能なんだか・・・・・・裏方で動くその手腕は天才的だ」




