第25話 同士討ち
機巧暦2140年1月・ドイツ帝国ヴュルツブルク
「え!? 先鋒に命じたはずのユズキ少将が動いていないと?」
「はい。ヴュルツブルクの北の森にて駐屯中とのことで動く気配がないとのことです」
「何やってんだアイツ・・・・・・」
レーゲル率いる第一師団《2万》とカーチス率いる第二師団《2万》は北方関まで来ると偵察部隊からそんな報せを受けた。
「何かあったのか?」
「カーチス将帥!! ユズキ少将より書状です」
「ああ」
カーチスは再び来た偵察兵から書状を受け取る。
カサッ カサッ!!
「・・・・・・・・・レーゲルを呼べ!!」
「分かりました」
副官は急いで後方に続いている第一師団のレーゲルに連絡をとる。
その後ーーーー
「なるほど・・・・・・ユズキ少将が動かないのはそういう理由があったのか・・・・・・・・」
「でも、まさかヘルマンが処刑されたとは驚きだ」
「いや書状だけで信用するのはまだ早い・・・・・・ユズキ少将の言うとおり罠かもしれない」
「しかし・・・・・・・そうなるといつまで経っても行動が出来ない・・・・・・・」
カーチスは困り果てる。レーゲルも何をしたらいいかと言った感じだ。
そしてーーーー
「・・・・・・・レーゲル、ここから砲を放った場合どこに弾着する?」
「フランクフルト内部までは届かないはず・・・・・・せいぜい城門までが限界だと思うが。な、何をやるつもりだ?」
「砲を放って奴らが応戦してこなければヘルマンは本当に死んだことになる。逆に応戦してくればあの書状は嘘となるわけだ」
「砲弾直撃を受けて応戦してこない奴なんていないだろ・・・・・・?」
カーチスの提案にレーゲルは半ば呆れたような表情をする。
「やってみる価値はあると思うぜ」
「ハァ・・・・・・お好きにどうぞ」
止めても無駄と判断したレーゲルはカーチスの提案を許可した。
「よし!! 砲兵部隊!! 残りの城門を吹き飛ばせ!!」
カーチスの命により砲兵部隊は砲に弾を装填し次々と乱射する。周囲にはたちまち火薬の臭いが立ち篭める。
ーーーーフランクフルト・城門
「隊長!! 砲弾が来ますゥ!!」
「はぁ!? どういうことだ!!」
「せ、説明してる暇がないです。ふ、伏せて下さい!!」
「なっ!!」
高らかに打ち上がる8発の砲弾・・・・・・・兵士らが護る崩れかけた城門に目がけて音速で落下してくる。
ドカァ!! ドカァ!! ドカァ!!
バリバリッ!!
「ギャァ!!」
「グハッ!!」
「ヒィィ・・・・・・・!!」
8発の砲弾により城門は木っ端微塵となりさっきまで生きていた兵士らの体がそこら中に散らばる・・・・・・・
南軍府ーーー
「な、何が起きている!?」
「敵でしょうか?」
「レイシア様、これは味方の攻撃です!!」
「はぁ!?」
偵察から報告を受けたレイシアは頓狂な声を上げる。
「ユズキは私が書いた書状を味方に伝えてないのか!?」
「・・・・・・そ、それは分かりませんが、おそらくユズキ少将は別働隊扱いで本隊とは別で行動してる可能性があります。そうした場合、本隊との連絡が難しくなっているかもしれません」
「・・・・・・・ならば仕方あるまい。砲兵部隊を破壊された城門に集めろ。同士討ちになるが・・・・・・夜が明ければお互い気付くだろ」
「わ、分かりました」
その後、南軍府から砲兵部隊が出ていき街中や崩れた城門に展開した。




