第4話 傀儡の新皇帝
機巧暦2140年1月・ドイツ帝国・ベルリン宮殿広間
「本日陛下を玉座に迎えられたことを臣下一同嬉しく思います」
「うむ」
「ブランデンブルク家は残念ながら断絶してしまいましたが、アルフレート家の娘・アルフレート=フォン=アイネスを新たなドイツ帝国皇帝として即位させることで帝政を引き続き行っていきます」
「・・・・・・・・・」
葬儀の2日後にアイネスがベルリンに到着。その後、即位式と臣下との謁見が行われていた。
「宰相はこの私ヘルマンが、副宰相は海軍大臣のマーシャルが務めます。陛下を全力で補佐させて頂きますので今後とも宜しくお願い致します」
「貴方が宰相? 前任の宰相が僕を補佐してくれるはずでは? そもそも貴方は陸軍大臣と聞いているが・・・・・・・いつ宰相となったのだ?」
アイネスの言葉に大臣らに緊張が走る。
「先帝からの遺言で前宰相に何かあった場合、陛下の補佐を私に任せられましたので」
「ふ~ん・・・・・・・分かった。宰相は貴方に任せる。僕を補佐してくれ」
「御意。陛下、これから宴になりますが如何致します? 我らも同席宜しいでしょうか?」
「許す」
「有難き幸せ」
ヘルマンは陛下からの許しに対してほくそ笑む。
宴会ーーーー
「陛下の即位を祝して乾杯!!」
「「「乾杯ィィィィィィ!!」」」
アイネスが上座に座り、左右にヘルマンとマーシャルが座った。目の前の長机には豚の丸焼やパン、スープ、ビールなどが置かれていた。
「陛下はまだ10代だ。先は長い・・・・・・羨ましい限りだ」
「いえ。貴方には年の功というモノがある。なにより若さよりも年の功が一番だと思うが・・・・・・」
「何を言われるか。若さがあれば何でも出来る。この老体ではどうにもならない・・・・・・・若さは武器ですぞ」
ヘルマンはビール瓶片手に持ちながらそう言う。
「陸軍大臣、陛下相手にラフすぎる。もう少し態度を堅くしたらどうか」
「フッ、マーシャル。人間って言うのは時には気を抜くことも大事なんだよ。宴なんだから好きにさせてくれ」
「・・・・・・・・・」
ヘルマンの言葉にマーシャルはため息をついた。
その後、宴も最高潮になった頃ーーーー
「従者!! 例のモノを持ってこい」
「わ、分かりました」
ヘルマンは従者にそう命じる。
「陛下、これから世にも珍しい料理をお持ち致します」
「へぇ、それは楽しみだ」
「・・・・・・・・・?」
アイネスは純粋に喜ぶ。それに対してマーシャルは眉間に皺を寄せる。
「お持ち致しました。肉料理に御座います」
「うむ」
従者らが持ってきたのは肉入りのスープ・・・・・・・
「さぁ皆様もお召し上がり下さい」
「・・・・・・・・うむ」
「・・・・・・・・」
ヘルマンに言われアイネスやマーシャルは出された肉入りスープを飲む。
「塩っ気が強い肉だな。ヘルマン、これは何の肉だ。豚、鳥、牛・・・・・・・私が食べた中でどれも当てはまらない代物だ」
「でも悪くはないね」
アイネスは肉を食べながらそう言う。
「フッそうですか・・・・・・・この肉は前宰相のカラダに御座います」
「?」
「はっ!?」
「肉の形をご覧になったらどうです?」
「うっ!?」
「・・・・・・・・!?」
臣下らは気づいたらしく絶句していた。ヘルマンやマーシャル、アイネスに出された肉入りスープにはソレらしきモノは見当たらないが臣下らの肉入りスープには少量の爪やら髪、さらに溶けた眼球が混入してた・・・・・・
「う”・・・・・・・・ヴぇぇぇぇぇ!!」
「うっ!!」
「オロロロロッ!!」
その場で嘔吐する者が後を絶たなかった。マーシャルも顔を蒼くしていた。
「解体したのか・・・・・・・あの後」
「東洋では処刑した罪人を鍋で煮て食べる文化があるそうでね。私はそれをやっただけです。私に従わないとこうなるという宣伝でもありますがね・・・・・・・私に楯を突けば陛下もこうなりますよ」
「・・・・・・・ボクを傀儡にする気なのか!? 貴方は」
アイネスは口を押さえながらそう言う。
「そう傀儡です。陛下には私の人形となって貰います」
「・・・・・・・・・」
そう言うヘルマンの瞳はガンキマリ状態になっていた。そしてアイネスはこの異常者からは逃れられないと悟った・・・・・・・




