第3話 偽りの不忠
機巧暦2140年1月・ドイツ帝国ベルリン宮殿
「陛下」
「・・・・・・・・・」
「亡くなるなんて」
「むむむ」
イリアスが亡くなってから2日後に葬儀が行われた。参列者は陸軍大臣、海軍大臣、内務大臣、外務大臣、財務大臣、宰相らだけで行われ、喪主である新皇帝はまだベルリンに到着していないため代理として宰相がやる事になった。
「海軍大臣、分かっているでしょうな?」
「・・・・・・・わ、分かっている。宰相が献花し終えたところを・・・・・・・」
「うむ」
陸軍大臣・アルフレート=フォン=ヘルマンにそう言われた海軍大臣・オットー=フォン=マーシャルは腰に吊しいる儀礼用の長剣の柄を握り締めた。葬儀の場とは言えども帯剣は許されていて聖職者を除いて全員が帯剣していた。
「続いては献花に移ります。代表として喪主代理の宰相様からどうぞ」
「・・・・・・・・・・うむ」
葬儀は粛々と続けられた。司会の聖職者がそう言うと宰相が緊張しつつ花束を受け取る。
チラッ
「・・・・・・・・・」
コクリ
「・・・・・・・・・・・・今だ」
「うむ」
カチャ
ヘルマンの言葉にマーシャルは剣を引き抜く。
そしてーーーーー
「はぁァァァァァ!!」
「なっ!?」
ドスッ!!
宰相は花を棺の上に置いて振り返ると同時に走ってきたマーシャルに腹を剣で貫かれる。
「き、貴様・・・・・・」
さらにーーーー
「宰相!! 覚悟ォォォォォ!!!」
グサッ!!
「ウゲッ!!」
陸軍大臣の息がかかった者らが剣を構えて宰相の背中目がけて突き刺す。血塗れとなった宰相は床に倒れる息絶えた・・・・・・・
「・・・・・・・・・ッ!!」
「こ、これは一体・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・」
突然の事にその場にいた連中は呆然として言葉を失う。
「アハハ!! お見事だ。マーシャル海軍大臣」
「フゥ~」
陸軍大臣・ヘルマンが列から出てくる。マーシャルはため息をつくと長剣についた血を払うと鞘に収める。
「皆は宰相を忠臣と思われているだろうが、宰相自身は皇位を狙っていたにすぎん。忠臣アピールをすることで自身の人気を高めようとしていたのだ!! 今、先帝が亡き後新たな皇帝をアルフレート家より迎えるが、宰相は新皇帝を傀儡としていずれは皇帝を暗殺して自分が帝位につこうとしていた!! だから我らが先手を打って暗殺致した!!」
「・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・貴方様が誠の忠臣に御座います。マーシャル海軍大臣、ヘルマン陸軍大臣」
「・・・・・・・・う、うむ。そうだな。お二方なら新皇帝を任せられる」
ヘルマンがそう言うと皆は口を揃えてそう言う。もちろん不満げな大臣もいるが後で何されるか分からないため同調した。武官は権力だけならまだしもバックに軍がいる以上、文官らは対抗出来ないのだ。司法であれば警察を出動させることが出来るが軍相手では不可能だ。
こうして陸軍大臣は宰相を兼務し、海軍大臣は副宰相を兼務することになった・・・・・・・・・




