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機巧魔術師の異聞奇譚  作者: 桜木紫苑
序章 異世界召喚
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第10話 内応者

機巧暦2139年10月・ドイツ帝国帝都ベルリン郊外



「久遠大尉、新田中将より贈り物をお持ちしました。新田中将からはお互い仲良くやろうとのお言葉です」



大使館からやって来た使者はそう言った。



「これを俺に?」



「遠慮なく使ってくれとのことです」



俺は呆然としていた。なんせ目の前に停まっている輸送トラックの荷台には札束が入った木箱が大量に積み込まれていたのだから・・・・・・



「これ・・・・・いくらあるんだ?」



「新田中将曰く一生遊んで暮らせる金額だそうです」



康介が帰ってから2日後に贈られてきたのだ。新田中将とは新田義明中将のことで駐日大使館の軍権を握っていて康介の上官にあたる人物だ。ちなみに面識はない。



現ナマが贈られてきたのは一度や二度ではない。この異世界では《世界的英雄》になると英雄にお金を贈って敬意を示すという習慣があるらしく贈り主は官僚や軍人と資産家など様々だ。



”グレイゴースト《灰色の亡霊》”の渾名が広まってから続々と現ナマが贈られてくるのだ。まあ要するに賄賂が横行していたのだ。



「わ、わかった。新田中将にはいずれこちらから挨拶に伺うと俺が言っていたと伝えてくれ」



「わかりました。ではこれにて失礼致します」



使者はそう言うと去っていった。



「さてこんな金・・・・・・・どうするか。送り返すにしても失礼だしな~」



変な話しだがこの資金で周囲を丸め込み、武器弾薬を買い込み、傭兵を雇って帝国に反乱を起こせば勝算はあるのだ。資金は溢れる程にありさらに人望もある・・・・・・・・恐らく帝国から睨まれるのは時間の問題だ。



これは使い切るしかないか。前に貰った資金で生活は充分やっていけてるし・・・・・・・さて何に使うかな。







ーーーードイツ帝国ベルリン郊外レイシア邸



「で、フランヌ共和国の内政事情を聞きたいんだが」



「まったく君はいきなり押しかけてくるとはな・・・・もう少し順序というものをだな・・・・・まあいい君のことだ何か思いついたのだろ? 何をやるつもりかね?」



「フランス共和国の有力貴族をドイツ帝国側に寝返らせる。そうすれば帝国軍は最低限の損害で共和国を獲れます」



「なるほど内応者をつくると言うことか」



レイシアの言葉に俺は頷いた。内応者をつくるには莫大な資金が必要だ。駐日大使館から貰った資金全額を内応者をつくる為に使おうと思ったのだ。成功すれば資金は無くなるし帝国から要らぬ疑いもかけられない。さらに敵を寝返らせた功労者にもなれる。一石二鳥な策なのだ。 



「共和国の内応者をつくるのは案外簡単かもしれないな」



「簡単?」



「今の共和国は3つの軍閥があってな。1つ目はマクシミリアン家の北フランス、2つ目はシャルル家の西フランス、3つ目はアンリ家の南フランスなんだが、いずれも王を擁立して互いに睨み合ってる状況だ。今はドイツ帝国という共通の敵が現れたからイヤイヤ協力しているらしいがな」



「その3つの家を統一っていうかまとめる連中はいなかったのか?」



「いや王家のアルチュセール家がまとめていたらしいが後継者が早世して断絶してるんだ。王家が消えた瞬間からシャルル、アンリ、マクシミリアンが争い始めたわけだ。さて君はどこの勢力を取り込むつもりかね?」



「・・・・・・南フランヌのアンリ家だ。そこを味方にすることが出来れば帝国領のエルザス、ロートリンゲンは侵攻されることはない」



アンリ家を帝国軍の楯として使うつもりだ。



「フッ それで誰を味方につけるつもりだ?」



レイシアはイタズラっぽくそう言った。わかっているが敢えて言わないらしい。



「内偵した結果、南フランスのアンリ=シャルロットを味方につけます」



内部事情を探るために密かに第一航空戦隊の諜報員をフランス共和国に送り込んでいたのだ。



「ほぉ~血筋はかなり薄いがアルチュセール王家の血を引く者を味方にするのか。確かに悪くはないな」



「え? さっきアルチュセール王家って断絶したって・・・・・・・?」



「男系が断絶しただけで女系は続いているのだよ。現王女はアンリ家とアルチュセール家を継いでいるのだ。つまり君が考えているのはシャルロット=アルチュセールを旗頭に分裂したフランス共和国を再統一するということか?」



「はい」 



「わかった。君の話しはあとで参謀総長や外務省に伝えておこう。同盟となれば外務省の仕事だからな」



「俺が使者として行きます」



「なに!? 君は何を言っているのだ?」



レイシアは驚きながらも目を細めた。



「・・・・・・・?」



「外交は外務省に任せることであって我々軍人が出る幕ではないぞ」



「いや、言いだしっぺの本人が行かないとダメだろ? 代理に行かせれば誤解を招きかねないし。その代理が意図を分かっていなければ意味がない」



「むぅ~・・・・・」



レイシアは顔をしかめた。交渉が上手くいかなかった場合、即時開戦という可能性もあるためレイシアが渋るのも当然だった。



「俺はドイツ帝国のために南フランスに行くわけではありません。個人的な交友関係を結ぶために行くだけです。なので・・・・・」



「参謀総長には内密ということか?」



「はい」



「滅茶苦茶な理論ではあるが仕方ないか・・・・・・止めても無駄みたいだしな。まあ上手くやってくれたまえ。くれぐれも軽率な行動は慎むようにな。君も帝国陸軍の一員だからな」



「ああ、わかった」

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