水金地火木土天冥海! 地球変形 Planet・Earther!
地球。それは、宇宙の宝。
暗闇に浮かぶ、奇跡の宝石。
類稀なる進化を遂げた惑星は、青く煌めき、緑をたたえ、数々の生命を生み出した。
がッ! 今その地球に、外宇宙から巨大な隕石が投下された!
「グアッハッハッハッハッハ!!!! 我が名は宇宙皇帝 イーヴィル・コスモ三世! 宇宙の拡張に伴い、お前達太陽系が邪魔になったので排除させてもらう! つきましては巨大な隕石を投下したので注意されたし! ではごきげんよう! グアッハッハッハ!!!」
これは、一月十七日という何の変哲もない日に上空へ映し出された、外宇宙からのメッセージである。
地球人は慌てた。「マジで!? どんだけデカイ隕石やってくんの!? やば!」 という反応がアンケート上の58%に昇り、後の42%は「うそくせー。ラーメン食って寝るわ」という結果に落ち着いた。
が、これは信じるかどうかは別として事実である! 現に隕石は投下され、刻一刻と我等が太陽系に近づいていたのであった!
――地球外脅威対策組織 Tikyu・Mazide・Pinch 指令室にて――
「長官! 隕石がレーダーに引っかかりました! 明後日には太陽系に衝突する模様です!」
「なに! 光の速度を無視してるんじゃないのか? 確かめ算したまえ!」
「いえ! コンピュータは頑としてこの数値であると訴えてきます!」
「ならばしかたない。……諸君! 我々に残された時間は、24×3となってしまった!」
「指令長。今日はあと2分で終わります。24×2に訂正されたらいかがでしょう?」
「本条君! ナイスだ。 いいかみんな! 残り四十八時間! これが我々に残された最後の時間だ!」
「うあああー! 地球最後の日に何をするか考えときゃよかったー!」
「俺は天音ちゃんと遊園地に行くぞー!」
「俺は母ちゃんのカレー食うッス! 誰か食べたい人はいるッスかぁ!?」
今までにない脅威が目の前に来たことで、訓練は受けども実地の経験が無いスタッフは大いに慌てた。だが一人! 指令長だけはやはり違っていた!
「まて! 諸君!」
「指令長!」
「近くのラーメン屋でヤサイマシマシチャーシューヌキアブラギトギトメンカタメアジタマラーメンゴハントッピングという呪文を唱える最後の日も悪くないかもしれんが……」
「いえ結構です!」
「だが! 一つだけ手段がある!」
「な、なんですかそれはぁ!」
「教えて下さいよ指令長!」
「それは! 君達にも極秘に開発していた、このロボットを使うことだ!」
「な、何だってェー!!!!」
時間が無いので、三行以内に説明しよう!
私達が暮らす地球は三百八年前に爆発していたのである! が、爆発した瞬間、未来にいる私達の祖先、すなわち未来人が地球そっくりな宇宙船をテレポートしたおかげで、周りの惑星や恒星に影響を与えることなく暮らしていけているのである!
「指令長! 爆発したなら、その時生きていた動物たちはどうしたんです!?」
「それは収まらなかったから次の機会だ! 生きていたら教えよう!」
「な、なんて投げやりだァー! 許せるッ!」
「というわけで……九星君! 変形だ!」
「は、はいい!!」
「グアッハッハッハ! これで太陽系が消滅……うん!? な、なんだあれはぁ!」
ゴゴゴゴゴゴゴゴ……
「ヒ、ヒヒィィン!!」
「ウォッ、ウォ、ウォォーッ!」
馬が慄き、ゴリラが戦慄する!
その雄叫びに合わせて、地殻が揺れ動き、大地が割れた!
綺麗な円形状の星は、見る見るうちに地割れ、傾き、そして人型ロボットへと転生した!
「完成! 地球変形! プラネット・アーサー!」
「な、なんだあれはぁぁぁぁ!!!!!」
「宇宙皇帝 イーヴィル・コスモ三世! お前の企みは、青い宝石が黙っちゃいないぜ!」
数々の星々が周囲を回りながら、その新しい勇者に微笑を投げかけた!
そう! 重力操作システムにより、表面に暮らす動物たちや、廻る物質たちを表面に留めた超巨大人型ロボットが、今この太陽系に出現した!
「こ、こしゃくなぁぁぁぁ!」
「よし、みんないくぞぉぉぉ!!!」
「「「「おう!!!!」」」
号令が、響く!
九星の咆哮を合図に、スタッフたちが卓上のパソコンを操作する!
顔が、違う。全く違う! あれだけ阿鼻叫喚に恐れ慄いた男達はもういない!
愛する人を守る為、豊かな自然を守る為、この一瞬一度きりの人生を謳歌するためにのみ、未来を見つめて走り出した!
「ロケットブースター、展開!」
「よぉし! あんな石ころ一つ、俺達が押し返してやるぜぇぇぇ!」
腰のブースターパックが熱を放出し始めた! 次第に白熱を帯びる熱は、今! 巨大な人型を外宇宙へと進めようとした! その時!
「待て!」
「指令長!?」
「どうしたんです!」
「動いてはならん!」
「なぜです!」
「我々が動けば、この太陽系のバランスが崩れて崩壊してしまう!」
「な、何だってェー!」
「それじゃあ、どうするんですか!」
「そう、ここから動けないのなら……」
「そうか! みんな、遠距離射撃だ! 一撃で、ぶっとばすぞぉー!」
察しが良すぎる主人公は指令長のお株を奪ってしまったが、今はそんなこと関係ない!
今だけ生き延びればいいのだ! そう、今だけ! 人には未来も過去も見る余裕なんてありはしないのだから!
「いっくぞー! マグマチックエネルギー、チャージ!」
「ユーラシア大陸からの退避を急がせろ! ユーラシア砲、出るぞぉ!」
「広すぎて退避できませぇん!」
「じゃあ地面に張り付いて飛ばされない様にしがみつくようアナウンスだァ! いそげ!」
「ガッハッハッハッハ! 立った一機で何ができる! これだから猿どもは知恵が浅くて困るわぁ!」
「言ってろ外野ぁ! ユーラシア砲、まだかぁ!?」
「ユーラシア砲準備オーケー! 照準角度調整中!」
「九星さん! マグマチックエネルギー、臨界です!」
「照準角度修正終了! 隕石捉えました!」
「よぉし! みんなの命、地球が預かる!」
「「「GOODRUCK、地球!!!!」」」
「いっけェー! グランアース!!!!」
『グランアース 発射しまーす』
ドオオオオオオオオッ!!!!
「な、なんじゃとぉぉぉぉぉ!!!???」
生命的緑光が、一筋の軌跡を描いて外宇宙までを貫いた。
その光は、火星からも、木星からも見えたという。
太陽系全員が願いを込めた一撃は今、超巨大隕石を貫き、そして影響の出ない範囲で大爆発を起こさせた!
「「「いやったぁぁあああああああああああ!!!!!」」」」
「やりましたよ指令長ぉぉぉぉぉぉ!!!!!」
「す、すげぇぇぇぇ! 宇宙で爆発したのに衝撃波が到達しねぇぇぇぇ!」
「そこかよ本条ォォ! でもやったぜぇぇぇぇ!!!!」
誇り高き太陽系第三惑星は、悪を許さぬ人型となって世界を救った。
ありがとうプラネット・アーサー! ありがとう未来人! そして大陸にしがみついた人々よ!
今回の危機は乗り越えた。しかし! もしかしたら次があるかもしれない!
その時はまた、君たちの力を借りるとしよう!
頑張れ地球! 頑張れ九星! 未来は、君たちの手に掛かっている!