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七話

 

「あー、もう無理! こんなにたくさんの人と話すのなんて入社したときの新人歓迎会以来だよ」

 カウンター席で悲鳴をあげる珠希に、順也と由美子が労いの言葉をかける。

 二人に呼応するように、マスターがウーロン茶を差し出し、珠希はその琥珀色の飲み物を一気に飲み干した。


「本当によく喋ってたよね。それで? 誰だか分かった?」

 軽く酔っ払っているのか、目を赤く潤ませた由美子が聞く。


「全然ダメ……一人も手がかりなし! ほんと誰なのかな――あ、ねえ。順也は、まだ時計と携帯を持たない主義なの?」

 交際していたときに、不便だから持ち歩いてほしい、と言って散々喧嘩になった。


「おう。仕事以外の時間を縛られたくないからな」

「元号も変わったっていうのに、相変わらず不便な暮らししてるね」


 ポテトをつまみながら三人で談笑する。

 由美子は時折、順也の方をじっと見つめている。

 そのたびに珠希の胸が重たくなった。


「お前は相変わらずだなぁ……。携帯と時計を捨てたら、俺の時間はそこで止まるんだよ。だから俺は永遠に若者でいられるってことだ、分かるかぁ?」

 滅茶苦茶な理論を展開する元カレに対して、珠希は大きなため息で答えた。


「――そういえば順也くん、聞いたよ。ご両親大変だったんだって?」

 静かにしていた由美子が突然、順也に話を振った。


「え、なんの話?」

 心当たりのない会話に珠希は目を丸くする。


「あー……親が事故で死んでさ。もう何年も前だけど、葬式とかでいろいろと大変だったな」

 悲しい顔も見せずにさらりと言う。


 一言くらい行ってくれたらよかったのに、と声をあげようとしたとき、お店の隅から怒声が響いた。

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