二話
珠希が再び一人になったとき、遠くの方で甲高い笑い声が響いた。
親友の由美子だ。
由美子は高校生のときに知り合い、同じ大学に進み、社会人になった後もずっと同じように親友でいてくれている。
そのため、他の同級生たちよりも珠希のことに詳しい。
この場にいる全員を集めたのも彼女だった。
連絡先を知らない歴代の元カレたちを全員集めた執念には、珠希も参ってしまった。
彼女を一言で表すなら、有言実行。
やると決めたことは、必ず実行する。
三十代になって始めたダンス、週末の女子会、ダイビング、スキーなど。
行動と継続率は比例しないが、彼女の実行力には目を見張るものがあった。
“――生まれたときと結婚式、あとお葬式くらいしか知り合い全員が集まることなんてないのよ。あたしたち四捨五入してもう四十歳なのよ? せっかくだから、パァーッと関わった人たち全員集めちゃおうよ”
由美子は、順也と再会したサンドイッチ店で熱を込めて語った。
最後の方は愚痴だったが、旦那はおろか恋人さえもいないのだから気持はよく分かる。
「結婚したいけど、誰でも良いわけではない」
由美子がそう言って順也に視線を向けたことは、特に印象的だった。
もやもやとするやり取りだったものの、一ヶ月ほどかけて今日のバースデーパーティーを準備してくれたのだから、本当に有難い話だった。