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その頃、団長と魔王は(魔王視点)

今更ながらルビの入れ方を覚えました(本当に今更!)

「しかし、何故今魔界の扉が開いたのだ…?」

魔術師達の長、団長と呼ばれる目の前の男は部屋に入るなり考え込む。


「ハルが来たからであろう」

余の言葉にこちらを睨む。


「先ほどの娘か?お前が人間を連れているのを不思議に思っていた。彼女は何者だ?」

「余の運命の女だ」

「そのわりに素っ気ないというか興味無しという雰囲気だったぞ、彼女は」

…痛い所を突いてくる。魔王である余が絶賛フラれ中とか言える訳がなかろう。


「…"闇への誘い(やみへのいざない)"という称号を持っている。あの者が森へ入ると持っていた光文字が変化したそうだ」



「……その称号が存在する事は知っていたが、本当にいたとはな…。オルソン博士が言っていた異世界からの来訪者………」

言葉をそこで切るとぶつぶつと呟きながら己の世界へと入る。


"己の世界(コレ)"に入ると長い。早くハルに会いたいのに部屋に鍵かけやがった。解呪はかけた本人しかわからぬ。


「おい、セラン。この事はバージュも把握しておらぬのか?そもそもあやつは何をしておる?」


セランとはこの男の名。バージュはこの国の王だ。

セランは額に手を当て、困ったような渇いた笑いを向ける。

「…陛下は畑仕事に夢中でね」

あやつは阿呆か?国王であろう?公務を放って何をしておる!


……ここにはおらぬ筈の蛇の副官が『お前もな!!』と叫んでいる幻覚が見えた気がした。気のせいであろう。あー、帰りたくない。ハルの隣にいたい。


「だが、封印が解けたのは気づいている筈だ。今まで我らの所に報告は上がっていないのは危険はないと判断されたのであろう。…もう一度封印…は無理か。ハルというあの娘がいる限り」

「ん?ハルは元の世界に帰ると申しておったぞ?」

帰したくないがな!帰れると言うなら力ずくで魔界に連れ去るが!

セランは余の発言を鼻で笑いながら告げた。


「帰れんよ。博士は諦めておらん様だがな」


ほおー。とどうでもよい返事をしながらハルの事を考える。


あの扉でいつもの様に見張りをしている時に聴こえたあの声。

扉の外では1人の女が背を向けていた。

心の臓が痛い。脈が速くなる。

顔が見たい。だが、見てしまった時余の体はどうなってしまうのだろう。

乱暴に女の肩を掴み己の方に向かせる。

勢いよく差し出された食べ物とこちらを見る怯えた瞳。



息が止まるかと思った。

その顔、その瞳、その声。全てが余の心を掴んだ。

運命だ。この女は余の物だ。

血液、神経…とにかく余を構成する全てがそう告げる。

そう思ったら思わず求婚していた。



……間を置かず"帰れ"と冷めた目で返された時はショックだった。

それで諦める余ではない。

欲しいものは必ず手に入れる。余は魔王ぞ?

だが、無理強いは良くないというのがわかった。恥ずかしがりやなのだろう。そういうところもまた良い。

女は"闇への誘い"という言葉を口にした。

確認をするために女の情報を読み取る。


…ハル・シドウ。ハルか。良い名だ。

年は26。…ふむ。見た目はもう少し若いのかと思ったが、まぁよい。年など我らには重要ではない。

…いかん。称号だった。確かに"闇への誘い"とある。それに異世界から来たのか…。

"闇への誘い"は闇に属するモノを引き寄せる。

…では余がハルに惹かれるのは称号のせいか?


否。と即座に否定する。闇に関する称号はいくつかあるが、どれも魔王たる余には効かぬ。

ではやはりこれは運命!!とそこまで思考に耽っていた時だ。


チョロチョロ…チョロチョロ…

何だか変な音がする。それに何故だか物凄く右手が痛い。

右に目を向けると…

「……っいっっっっったいわぁぁぁぁぁっ!!余の珠の肌に聖水をかけるとは何事だぁぁぁぁぁ!!」

ま、魔族に聖水とかこやつは正気か?!いや人間なら正気か!

「人が話しているのに何ボーッとしている!もうよい!向こうも話は終わった頃だろう。行くぞ」

カチャと鍵の音がしたので急いでハルの元へ向かったがノックをしろと怒られた。


日も傾いてきた故にハルを森の入口まで送ることになった。

セランが呪い(まじない)をかけたので余も扉へと迷わず来れる呪い(まじない)をかけておく。

最後に耳元で囁いた時のハルの顔に口角が上がる。


…あぁ、早く余の所に堕ちてこい…










「…今回の事は陛下に報告しておく。お前がまた此方に来るのであればな」

「まあ、当然であろう。魔界の方の結界も強化しよう。あれはカナタが張った結界故余と奴以外には通れん。とはいえ油断は禁物だ」

「カナタ殿は息災か?……久しぶりにまた語り合いたいものだが…」


「…無理であろうな。少なくとも現状では。あの争いはお前達にとっては遠い過去でも、我らにとっては昨日の事。



………双方ともに傷を負った。…余やカナタの様な者は少数だ。打開策を考えねば」

「…ほう。良い打開策があるかね?」

セランとオルソンが此方を見る。



あるとすればハルが言っていた"アレ"だ。ハルの興味も引けて一石二鳥だ。





「うむ!魔界で農業を営む!!」


「「…あ、バカだコイツ」」

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