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お付き合いは段階が大事

初対面でのプロポーズに脊髄反射で帰れと伝えると、黒い人は唖然とした後顔を真っ青にしてよろめく。


「……な、何故だ…っ!?余の妻になれるのだぞ!?感激にむせび泣いて了承するとこだろう!?」


凄い自信だな、おい。


「いや、だって知らない人にいきなりプロポーズされてOKする程尻軽じゃないんで私」


というか結婚とか考えてないし。兄達の影響から男に興味がないんだよ。…イケメンに見惚れた事は否定しないが。

あと食べられない安堵からクリームパイをバスケットに戻す。



「………ふむ。そうか、確かに些か早急だった」


すまなかった。と素直に謝る黒い人。

その所作は優雅で、高貴な人だと思われる。


「…で、貴方どちら様?」



その扉から出てきましたよね?容貌といい普通じゃないのはわかるんですが。

一人称が"余"なんて人あまりいないしね。




「…ああ、そうだな。自己紹介をしていなかったな。




我が名はサミエル。魔界を統べる王であり、唯一無二の存在だ」




やっぱりー!?魔界あるんだ!しかも魔界の王って…。王子って言われた方がしっくり来るくらい若いんだけど…。



「…で?その王サマがこちらに何の用?世界征服?」



「お前…いや、そなたに求婚しに来たのだが?」





「な、なん、だと…?!それだけ?それだけの為にわざわざ?!」



「うむ。この扉の先に魔界は広がっている。扉は人間界側からしか封印できない。魔界側からは開かぬ」




それが1ヶ月程前扉が数センチ開いていたのだという。

直ぐに周辺に結界を張り魔界の住人を近寄れなくしたそうだ。



そして今日、扉の向こうで声がしたと思ったら扉が開き、目の前に私がいた。と…



「…そなたを見た時に感じたのだ。これが運命なのだと」



一目惚れだ。と真っ直ぐに見つめる魔王さんに自然と頬が熱を持つ。




イ、イケメンパワー恐るべし……。




………ん?待てよ…?1ヶ月前って私がここに来たのと同じくらいだよね?まさか……



「"闇への誘い"…」


「うん?」



「…私が持つ称号…」



「………ふむ。暫しそのままで」


そう言うと魔王さんは私の額に指(というか爪先)を当てる。

触れた場所が僅かに淡い光を発する。



「そなたの情報を読み取った。…そうか、異世界からの来訪者か。

確かに称号は"闇への誘い"…。この様な称号は初めて見た。




成る程な、では扉が開いたのも頷ける」



魔王さんが扉の方を見ながら


「やはり余とそなたは出逢うべくして出逢ったのだ」


私の方に顔を向けた。満面の笑みだった。



「いやぁ、違うかな。今日この森に来たのだって神殿に行こうとしていたからで…」



「だが地図はここを示したのであろう?そなたの魔力が反応して書き換えられたのだろう」


書き換えられた、なんてそんな事…。


いや、でも筆で書いた文字じゃない。あれは魔力で動いていたのかな…?

…ん?じゃあもう一度地図を貰って神殿に行こうとしてもここに来てしまうの…?


「魔術師達が使う光文字を使った地図であれば何度やってもそなたの魔力と称号の力によってここに来るであろうな」


私の考えを読んだかのような発言に思わず魔王さんを睨む。


「それ困る。私は元の世界に帰りたいんだから」


最近は農業に精を出し過ぎて何度か目的を忘れたことあったけど。


「何故だ?余が感じるにそなたこの地で楽しく生活しておるように見えるが?」


「そりゃあ、農業なんて初めての経験で楽しくって…って違う!とにかく私は家族に会いたいの!」


どんなに傍若無人でドSな家族であろうとも、別れの挨拶もなしなんて嫌だったから…。


「家族…。余には解らぬがそなたには大事な存在なのだな。

わかった。神殿まで送ってやろう。ついでにこの扉の事も説明せねばなるまい」


魔王さんが右手を上げると人差し指に光が集まる。

いきなりプロポーズしてくるから誤解してたけど、物わかりがいいっていうか懐が深いというか。


…もしかしていい人?魔王だけど。


光が大きくなるのと同時に周りの景色が歪んだ。

立ち眩みがして思わず目を瞑る。



「目を開けてよいぞ、ハル」


魔王さんが肩に手を置きながら優しく促してくれる。



目を開けるとそこには大きな神殿があった。



「…い、一瞬で…凄い…」


「ここがそなたの本来の目的地、魔術師達が集まる神殿だ。ほら、入口にいる者に尋ねるがよい」


魔王さんが指さした先には私達を見て口を開けてるフードを被った男性。



「あ、うん。あの!オルソンという魔術師さんはいらっしゃいますでしょうか?」


「へっ?オルソン博士?います、が…あの、貴女の隣の方もしや…」


「うむ。余は魔界の者ぞ。その事で扉の責任者に話がある故通してもらおうか」


腕を組み仁王立ちでそう告げる魔王さんを見て、魔術師さんは青ざめた顔が更に青くなる。…目に見えて震え始めた。



「…ま、魔族!?た、大変だぁぁぁっ!!皆魔族がぁぁぁっ!!」








「………走って逃げちゃったけど、中に入っていいのかな?」


「良いのではないか?」

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