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リーシャ王国

馬車に揺られる事およそ3時間。同乗者の2人と世間話していたらリーシャ王国へ到着した。



大きな門の両脇から2メートルくらいの塀が連なっていて門には役人らしき人2人が私達を待っていた。


商人の2人は専用の手続きがあるらしく、役人の1人に連れられて行った。


私はもう1人の役人に書類を受け取り、移住許可が降りる。

これで私は今日からリーシャ国民だ!


「それではこの国での貴女の良い暮らしを願っております」



そう言って役人は去っていった。



…あの、せめて私の家を教えてください…。住所にあるメーベル地区ってどこですか…。




途方に暮れながら看板を頼りに歩いていると背後から

「君、見ない顔だね。移住者?」

と男の人の声がする。


振り返ると金髪に日焼けした肌が眩しい美青年がいた。

「あ、その紙持ってるからやっぱり移住者だ。俺はニールって言うんだ。ニール・オルソン。よろしく!君可愛いね!名前は?」



私が口を挟む間もなく自己紹介とナンパをされてしまった。

………チャラい…。


…まあ、道だけ聞いてさっさと別れよう。

「ハル・シドウと言います。あの、メーベル地区を探してて…。」


一応向こうは自己紹介してくれたんだからこちらも名乗らないとね。


「メーベル?じゃあ家を探してるんだね。俺もメーベル地区に住んでるんだ。案内するよ!」


くっ!!ナンパから逃げきれなかった…!

仕方なくニールと名乗るナンパ野郎に付いて行く。


きちんと整理された石畳の街。街の雰囲気はいつか映画で見た中世のヨーロッパを思い出させる。

ニールによれば人口はおよそ2000人。小さな国らしく人々が協力しあいながら暮らしているそうだ。


この国で働く方法は大きく分けて3つ。商人になって自分の店を持つか、ギルドに入って商品を納品するか。王国の騎士団や魔術師団に入るか。

「商人は商人ギルドに入ってなきゃいけなくてさ、入る人間は限られてるから、ハルは残り2つだな」

そっか。門で同乗者の2人は別の受付だったわ。

「ギルドには農業ギルドと漁師ギルドがあるんだけど、どちらも採れた商品を納品するだけ。騎士団や魔術師団は年に1回ある入団テストで優勝しないと入れないんだ」

うーん…体力には自信あるけど戦ったりするのは苦手だな…。

「漁師ギルドは勿論魚の納品。この国に海はないから川魚なんだけど、周辺の国に好評なんだ。

農業ギルドは野菜や果物、後は畜産物の納品。この国の土は凄い栄養があるらしくてさ、種を植えたらあっという間に収穫できるんだよ。あ、因みにその場で換金されるから」

移住者が最初に入るんなら農業ギルドかな?とニールが説明してくれる。



うーむ…最初の印象がアレだったけどニールって意外と良い奴?

面倒見がいいんだろうな…。



「…っと、ほらもうすぐ着くよ。正面に赤い屋根が5つ程見えるだろ?あそこがメーベル地区だ」


ニールが指差した先には赤い屋根と煉瓦の家が5件。

私は1番左の家らしい。

…え!?一戸建てですか?!お金無いのに!?気前良すぎませんか?リーシャ王国!!


案内してくれたニールにお礼を言って中へ入る。


「…ちょっと……大丈夫?騙されてない?私…」



一戸建てってだけでも驚いてるのに、中に入ると広いリビングにキッチン、テーブルや食器棚。あ、ちゃんと食器も入ってる。

奥の部屋を開けると大きなクローゼットに鏡台。そしてダブルベッドまである!風呂トイレ完備!!これで家賃0円!!す、凄い…。都内だったら何万何十万するんだろ…。




「リーシャ王国…最高か…。シンプルなデザインがめっちゃ好み…」



私が部屋に感動していると玄関のチャイムが鳴る。


開けるとそこには



「荷物置いた?次は農場を案内するね!」



ニールよ…お前、お節介さんか…。




「いや、農場より私は異世界の研究をしている人に会いたいんだけど…」


そう言うとニールがキョトンとした顔をする。


あ、引きます?引きますよね、移住してすぐに異世界の事聞くなんて。分かってますよイタイ人を見る目をしないでくださ「異世界の?ハル、うちのじいちゃんに用事なのか?」


お前は!!何でさっきからフラグ回収するんだ?!あれか?お前は乙ゲーの攻略対象か!?ニールルート突入ってか!?



「…や、ちょっと冷静になれ…。ニールは異世界の事知ってるの?」



「…うーん…俺はあんまり…。じいちゃんがガキの頃この国に異世界から来たって人がいたらしくって、その異世界に興味を持ったから研究してるってじいちゃん言ってたな。あ、因みにその人はこの国で奥さん見つけて幸せに暮らしてたって」


つまりは元の世界には帰らなかった。…帰れなかった。

1300人以上の異世界人も帰った事例はないって田中が言ってたし…。



「おじいさんに今会える…?」



「じいちゃんはこの国の外れにある夜の森の中の神殿で研究してるんだけどさ、最近ちょっと留守にしてるんだよ」


留守か~。うん、まあ、そうトントン拍子で事は進まないか。


「帰ってきたら俺が話つけておくよ。それまで働きながら待っててくれよな。…じゃ、そういう事で農場に行こうか!」


ニールはそう言って私の手を取って農場まで連れていってくれた。







「だけどハルは若いのにしっかりしてるよな。俺も年上として頑張らないと駄目かな~」


「ニールっていくつなの?」


「20歳!」

「年下じゃんか!!」




「…………へ?ハル18くらいだろ?」

「……………………26ですが」




「……え、意外と年食ってんごはぁぁ!!!」

「(左手を降りながら)ごめん、蚊がいたもんで」












ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「…………………」


「………何をしているんですか?陛下」

「!!!!!べべべべべ別に何もしていない!結界に立ち入る不審者はいないか見張っていた所だ!」


「…(私の目には貴方がそう写っていますが)陛下、仕事が立て込んでいるので城に戻ってください」



「…いや、しかしだな」

「戻るぞ」

「…………………わ、わかった」


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