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陛下のたのしい歴史講義いちじかんめ

気温の変化についていけず体調を崩しておりました。

皆様も体調に気をつけてお過ごしください。

王族が住まう城は国の東の高台に位置し、国のどこからでもその存在を確認できる。

この国に着いてすぐに近くまで来たことはあるんだけど、城の名に恥じないその荘厳で豪奢な外見と入り口にいる見張りの騎士の威圧感に尻込みして早々に退散したことがある。

それに王城近くの通りは学校やら闘技場やら私に縁がない施設ばかり建っているからそれ以降通ることがなかった。



まさかそんな場所に今いるなんて思わなかった。


騎士さんに案内された豪華な応接間のこれまた豪華なソファーに座り私とニールは陛下と向かい合わせになる。


「さて、どこから話そうか…。

まずはこの世界の成り立ちからにしようか」


メイドさんが淹れてくれた紅茶を飲みながらゆっくりと陛下は語り始める。








〝初めに空と海があった。そこから一組の夫婦神が生まれた。

夫婦神は大地を作り、多くの神々を産んだ。


そしてこの大地で暮らす最初の生命を創り出す。


ところが最初に創った男女の生命は優れた知性と強靭な体を持っていたが、(いびつ)で醜悪な姿をしていた。


失敗作として二人は神々が住まう大地から遠く離れた辺境に追放された。


次に創りあげた生命は先の二人ほど優秀ではなかったが美しい姿であった為、神々に愛された。これが今の私たち、人間の祖先だ。

 

これに怒り、憎しみを抱いた辺境の二人は神々に復讐する為、己が子供達と共に神と人間に戦いを挑んだ。


長い戦いの末、神と人間が勝利した。

辺境の者達は、魔の異界に封印される。故に彼等は魔族と呼ばれるようになる。


そして神々は勝利の代償として肉体を失い、彼等もまた天空の異界に去っていった。


残された人間は大地を切り開き国を造り上げる為各地に散らばった"




「……はい。今の話がこの世界の成り立ち、神話だね」



「魔の異界って今扉の向こう側の事ですよね?何でそんな危険なモノがあんな森にあるんですか?」


普通そんなに忌み嫌われるモノなら遠く、それこそ海の底にでも封印するんじゃないの?


陛下はティーカップを置くと穏やかな笑みを向けた。


「…最初はあんな扉なんてなかったんだ。封印した場所も無ければ異界に通じる道も無かった。


……それが崩れたのは今から250年前。



健立して間もない我が国のある貴族の男が森で魔術の実験をした。


その威力は凄まじく、森を焼き払い、見えなかったこちらの世界と魔界を隔てる封印に亀裂が入る程に。



…その結果、神話と同じように争いが起きてしまった」



「…魔族は人間が憎いのでしょうか?」


神話の中の魔族は、醜いという理由だけで捨てられた。

自分達より劣っている人間に憎しみを持つのもわかる。


私はそんな経験がないから、彼らの気持ちをすべて理解することは難しい。



でも神話の中の魔族が人間を敵視するのは理解できる。


では、250年前の彼らが結界に亀裂が入っただけで戦いをするのだろうか?



あの時、サミエルは私に憎しみや怒りといった感情を持っていなかった。

それは(自分で言うのはかなり恥ずかしいが)、私が彼の運命だったからなのかもしれない。


でも、それなら神殿にいた魔術師達は?彼らの殺気に臆することもなく、嫌味を言ったり団長さんと談笑までしていた。


私の疑問に陛下は少しだけ眉を落とす。


「そうだね…。今の語りだけを取るとそう見えるだろうね。



昔の彼らは異形の姿であれど、戦いは好まない温和な性格の者が多かった。

だから人間界と通じてしまってもこちらに来ることはなかったらしい。




それを破ったのは、双方の子供達だった。



人であれ、魔族であれ、獣であれ、子供たちはいつだって好奇心旺盛だ。


人間の子供達は大人達に内緒で1人の巨人の子供と仲良くなった。

人間は巨人の手や肩に乗って遊んだりし、巨人の子は異界にはない色とりどりの花で作られた花冠に喜んだ。





だが、ある日とうとう大人達に見つかってしまう。


大人達は子供が巨人に襲われていると勘違いして、巨人から子供達を引き離し、巨人を捕えようとした。


だけど巨人の子は抵抗しようと暴れた。




それを攻撃だと認識した大人達は、巨人の子を殺してしまった…。






その一部始終を魔族が見ていたとしたらどうなる?」


「…っ」



自分達の子供が、家族が、仲間が人間に殺された。


まして巨人の子は遊んでいただけ。冤罪だ。


だけど子供だけでは上手く説明はできないだろうし、そこに別の魔族が加勢に入っても襲撃だと言われて争いが勃発するかもしれない。


一瞬の迷いが巨人の子を殺した。

己への怒りと悲しみと人間に対する認識…。


「……学校では、そんなこと習いませんでした。結界に亀裂が入ったこと、争いが起き、双方の王が終結させた。くらいにしか…」


ニールが暗い表情で膝に置いていた両手を強く握りしめる。


「その件で激怒した魔族は人間界に襲撃をする。

互いの血で大地を染めた。

事態を重く見た双方の王は会見を開き、話し合いの末、互いのすれ違いや誤解に気づく。


そして、これ以上負の連鎖にならぬようにと終戦を宣言した。



その後結界の修復をしたんだが、最初に亀裂が入った場所は大きな穴となり修復に時間がかかる。


なのでその場所を覆う程巨大な扉を設置してそれごと封印することにした。

空間より物体に魔術を施す方が簡単なんだよ。それで穴が完全に塞がるまでのつなぎにしたんだ。


この封印は人間側からしかできない。

これは魔族がこちらの世界に介入する意思はない、ということを証明するためだといわれている」




そんな大事な封印を私が解いてしまったのか…。

250年経って封印を解いてしまった。


争いが起きないよう私ができることは、森に近づかないことの他に何か……………



何か、忘れているような………。



「質問なのですが、ここへ来る前に陛下はハルに「サミエルに会ったことがある」と仰られていました。これは一体どういう事なのでしょうか?」



!!それだ!!ありがとうニール!やっぱり君はできる子だ!




「ああ、それはね……」


「「それは…?」」


私とニールの声がシンクロした。ついでに同じように前のめりになっている。






「うん、その話は2時間目にしよう!」



にっこりと笑って告げる陛下の前で2人で思いっきりずっこけた。



続くんかい!!


詰め込みすぎて収拾がつかなくなったので2つに分けました。

寝ないでください、ハルさん

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