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笑えない俺と嘲笑う同居人

作者: 千人

「そんなことしてて楽しい?」

「楽しいとかそういう理由でやってんじゃないの。」

「じゃあ、なんでそんなことしてんの?」

「………。」


わざわざ答えてやる義理はないだろう。

なぜ自分がやっていることに対して迷惑もかけていない相手に懇切丁寧に説明などしてやらねばならんのか。


「ねぇってばっ!」


説明をしてやる必要があるだろうか?いやない。

反語を使う理由があっただろうか?いやそれもないな。


「聞いてんのかよっ‼」


バシッ!


「痛てぇっ!!」


俺の顔には三本の詰めの跡が顔を横断していた。

この俺の顔をこんなにグレートにしてくれた相手は何を隠そううちの猫、毛玉である。


「毛玉っ!お前家主に対してなにしやがるっ!」

「あんたこそ平日の昼間っから何してんのさっ!」

「見てわからねぇのか…よいしょっと。」


俺は畳の上に寝転がり、元の体勢に戻る。


「わからないから聞いてんのっ!」

「何だ分からねぇのか?そのちっこい頭使ってよぉーく考えろ。」

「……天井を見てる。」

「そうだ、その通りだ。分かったら邪魔しないで黙ってろ。」

「いや、そんなわけないでしょ!ちゃんと本当の理由を教えてよ!!」


しつこいやつだ。教えてと乞えば何でもかんでも教えてもらえると思ってはいけない。

自分で考えることを覚えなければならない。

俺の育て方はまだまだ甘いようだ。


「自分の力だけで何とか考え抜いてみろ。そうすれば化け猫になれるかもしれないぞ!」

「別に化け猫なんかになりたくはないのだけれど…。」

「お前には向上心が足らんな。」

「その言葉そのまま返すわ。」

「………。」


寝そべったまま言うセリフじゃなかったか…。

それとも平日の昼間だからか?

それなら平日というものを作り出した奴を訴えて金をむしり取ってやらねばなるまいな。


「何バカなこと考えてんの。」

「家主に対してバカとはなんだ!だいたい俺が何を考えていたかなんてわからないだろう?」

「何考えてたかなんてわからなくても舌を出して白目向いてれば誰だってそれくらいわかるわよ。」

「………。」


まぁ、そんな顔をすることぐらい生きていれば誰にだってあるだろう。人間だもの。


「それじゃ、そろそろ出かけようかね。」


天井のシミを数えるのをやめ「よっ!」と体を起こす。


「どこにいくの?」

「断頭台だよ。」


そして今日も何もいない部屋に別れを告げ俺は断頭台で死刑を執行する。







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