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ヤンキーが語る昔ばなしシリーズ  作者: 山田マイク
『ヤンキー昔ばなし』
40/40

ヤンキーと恋


 恋ってやつは突然なんだよ。


 いいか。


 惚れるってのは理屈じゃねえんだ。


 マブいから惚れる、んじゃねえんだ。


 カッケーから惚れる、んじゃねえんだ。


 惚れたから、惚れてるんだ。


 人間ってのはそういうもんなんだ。


 好みだからとかよ。


 イケメンだからとかよ。


 そんなのは後付けなんだ。


 まず、惚れるんだ。


 惚れてから、その理由をくっつけてるだけなンだよ。


 人を好きになるってなァ、そういうことだ。


 ンでよ。


 俺ァよ。


 久し振りにマジになっちまった。


 俺には結婚を約束してる女がいるってのに。


 俺はそいつのために命を捧げると決めたってのに。


 まったく、人間ってのは本当に馬鹿な生き物だ。


 俺は──禁断の恋に落ちてしまったんだ。


 そう。


 出会いは突然だった。


 俺はその時、いつものようにYouTubeでスズキ・カタナの動画を見てたんだ。


 イカちぃ改造しやがってるゲテモノバイクを見てたんだよ。


 するとよ。


 オススメの欄に、ふと、緑色のサムネイルが見えたんだ。


 あの"緑の奴"がバイクの歴史を解説してたんだ。


 そしてその画面を見た瞬間。


 俺の脳ミソに電流が走った。


 まるで雷に打たれたみてーによ。


 体中が痺れたんだ。


 なんて可愛いンだと思った。


 こんな可愛い女がいンのかと思ったんだ。


 そう。


 それが俺と"彼女"との出逢いだった。


 気付いた時にはもう遅かった。


 もう、惚れてたよ。


 あ?


 婚約者のことは愛してないのかって?


 馬鹿野郎!


 そんなわけねえだろ! 


 俺ァユミを愛してる!


 心の底から愛してるンだ!


 あいつのためなら死ねる!


 あいつのためなら命なんて捨てられる!


 ユミのためなら!


 俺ァ、ユミのためだから、生きていけるんだよ!


 ……けどよ。


 ……それでもよ。


 惚れちまった。


 惚れちまったンだ。


 あの声。


 あの姿。


 あの口調。


 あの語尾。


 もう、頭から離れねぇンだ。


 ……。


 …………。


 ………………。


 ……………………。


 ………………………………ずんだもん。


 畜生。


 なんなんだよ、あの野郎。


 可愛すぎンだろ。


 大体、あの野郎は男なのか女なのか。


 "彼"なのか"彼女"なのか。


 生えてンのか生えてねェのか。


 生えてない方が嬉しいのか。


 生えてると悲しいのか。


 それとも、生えてる方がお得なのか。


 謎。


 謎じゃねェか。


 恋はミステリーたぁよく言ったもんじゃねェか。


 俺ァ学がねェからよ。


 難しいことは分からねェ。


 ユミを愛してる。


 けど、ずんだもんも愛してるンだ。


 この恋は許されるのか。


 許されねェのか。


 ユミは許してくれるって言ってた。


 おう、そうだよ。


 俺ァ隠しごとなんて出来ねェからよ。


 正直に、洗いざらい、ユミに話したんだ。


 そうしたらよ。


 あいつは許してくれるって。


 本当、あいつの愛は海より深ぇよ。


 あいつは愛のYAZAWAだよ。


 愛のロックンロールだよ。


 ……………………。


 …………。


 ……まあ、若干意味分かんねえけど。


 とにかく、ユミは許してくれた。


 だけどよ。


 それで良いのかって。


 それで俺ァ男として間違ってねェのかって。


 そんな風に悩んでんだ。


 ユミ。


 ずんだもん。


 どっちも、思い浮かべると心がキュンとすんだよ。


 こんな浮気モンがよ。


 許されるわけねェよな。


 だから、今日、ここで決める。


 ユミか。


 それとも、ずんだもんか。


 ……。


 …………。


 ………………………………………………………………。


 ………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………。


 ………………………………ユミだ。


 あたりめーだよな。


 俺にはユミしかいねえんだ。


 最初から、ユミしかいねえんだから。


 俺はもう、一生ずんだもんは見ねェ。


 Xのフォローも外すし。


 YouTubeのチャンネル登録も外す。


 同人誌も全部売る。


 pixivもお気に入りごと削除する。


 俺の視界からすべてのずんだもんを削除するぜ。


 よし!


 そうと決まったら善は急げだぜ!


 今から──





 さっそくアカウントの整理をしてくるのだ! 


 


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