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ヤンキーが語る昔ばなしシリーズ  作者: 山田マイク
『ヤンキー昔ばなし』
38/40

ヤンキーとカリスマ


 誰からも好かれる人間ってのはいねえもんだよな。


 どんなに優秀なやつでもよ。


 どんなに優しきやつでもよ。


 どんなに愛されるやつでも。


 やっぱりそういうやつが嫌いだって野郎が出て来るんだよな。


 誰からも好かれるやつが嫌い、なんていうへそ曲がりもいるしよ。


 100%の人間から愛されるなんてやつはこの世にはいねえんだ。


 ……と、思ってたんだけどよ。


 この間、風呂上がりによ。


 俺ぁ、ふと気付いたんだよ。


 そう、閃いたんだ。


 まさに天啓ってやつだ。


 神からの啓示を得たんだ。


 "それ"に気付いた瞬間。


 脳天から爪先にまでものすげえ電流が走った。


 その"気付き"はたちまち五臓六腑に染み渡った。


 体の芯から震えが来たんだ。


 ……いた。


 いたよ。


 誰からも好かれるとんでもねぇカリスマ。


 どんな人間も及ばねえ。


 どんな傑作マスターピースも辿り着けねえ。


 そんなカリスマ。


 圧倒的なカリスマ。


 神すらも超え得る、超自然的存在が。


 この世には、たった1人だけいたんだ。


 それはよ……





 









 チョコモナカジャンボだよ。







 そう。


 森永製菓の主力商品である、あのチョコモナカジャンボだ。


 俺ぁよ。


 風呂上がりにこのチョコモナカジャンボを食べながら思ったんだ。


 そういや、チョコモナカジャンボが嫌ぇなやつ、1度も聞いたことねえ、ってな。


 それどころか。


 全員が全員、口を揃えてこう言うんだ。


 美味しいよね、チョコモナカジャンボ。


 コスパも良いしさ。


 って。


 いや。


 これマジでよ。


 俺ぁ生まれてこの方。


 チョコモナカジャンボが嫌いってやつに出会ったことがねぇんだ。


 チョコモナカジャンボの話になるとよ。


 みんなが口々にこういうんだ。


 幸せそうに。


 どこか懐かしげに。


 チョコモナカジャンボって神だよね。


 って。




 支持率100%だよ。


 99%じゃねえ。


 99.9%でもねぇ。


 まごうことなき。


 純粋な100%だ。


 100%中の100%だよ。


 こんな神も仏もねえ世の中によ。


 誰も信じられねえ社会によ。


 圧倒的なカリスマがいたんだ。


 それが――






 チョコモナカジャンボだよ。


 風呂上がりに食うチョコモナカジャンボ兄貴はよ。


 絶対的な正義だよ。


 誰にもこいつを否定することは出来ねえんだ。


 キャンプで食べる、みんなで作ったカレー?


 海水浴で、ヘトヘトになるまで遊んだあとに食べるカップヌードル?


 いやいや。


 そんなもん、比べものにならねえよ。


 風呂上がりのチョコモナカジャンボ兄貴はよ。


 まさにこの世に現れた救世主なんだ。


 王道のバニラと。


 パキッと割れる板チョコ。


 それを包み込む菩薩のような最中生地。


 そして、僅か100円ちょっとで買えるとは思えねえほどの、暴力的なほどのボリューム。


 ああ。


 神様。


 ありがとう。


 そして、ごめんなさい。


 俺たちは貧困も戦争も病も。


 何一つ克服することは出来ていないけど。


 それに対して絶望を抱いていたけど。


 落胆し。


 嘆いていたけど。


 けど。


 俺たちには。


 そう、俺たちには。







 チョコモナカジャンボがあるじゃねえか。





 そのことに感謝してよ。



 日々を頑張って生きようぜ。


 



 ……ただよ。


 チョコモナカジャンボをすっかり食べ終えて気付いたことがあってよ。


 それは――





 雪見だいふくも同じくれぇカリスマ、ってことなんだ。



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