表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ヤンキーが語る昔ばなしシリーズ  作者: 山田マイク
『ヤンキー昔ばなし』
35/40

45 『でんでんむしのかなしみ』


 あるところに、でんでんむしがいました。


 そのでんでんむしはある日突然、気付いたんです。

 自分の背中の殻には悲しみが詰まっているのだ、と。


 そのでんでんむしはその気付きに絶望してしまい、生きる希望を失いました。

  

 そして、彼は友達にそのことを相談したんです。


「私の背中には悲しみが詰まっている。私はもう、生きていけない」


 と。


 するとその友達はこう言いました。


「悲しみを背負っているのはあなただけではありません。私の背中にも同様のものが詰まってあります」


 でんでんむしはそうなのかと思って、さらに別の友達に相談しました。

 するとやはり、別の友達のでんでんむしはこういったのです。


「それはあなたばかりじゃありませんよ。私の背中の殻にも悲しみはいっぱいです」


 でんでんむしはそれから、いろんな友達に相談して回りました。

 すると、どのでんでんむしも、みんな悲しみを背負ってるではありませんか。


 最初のでんでんむしはここに至り、ようやく気付きました。

 この世に悲しみを背負っていないものなどいないことに。

 

 それから、でんでんむしは悲しむのをやめました。

 自分はこの悲しみを背負って生きて行かなきゃいけないのだ、と。



 ……私はこのでんでんむしさんと同じでした。


 どうして私ばかりいじめられるの。

 どうして私ばかり大変な運命にさらされないと行けないの。


 どうして、どうして。

 どうしてなの。


 そんな風に思ってたのは、きっと私が、自分しか見ていなかったからですね。

 みんなは私みたいに、悲しいからと言って、悲しい悲しいと嘆いていないだけ。

 はしたない自己憐憫に浸っていないだけ。


 よく目を凝らして見てみれば、誰も彼もみんな背を丸めて耐えているんです。

 

 私、この世界は救う価値が無いと思ってたけど――

 どうやら違うみたい。


 でも、気付くのが少し遅かった。

 もう私だけの力じゃ「侵食」を食い止められない。


 本当はお兄ちゃんを巻き込みたくなかったけど……そうも行かなくなりました。

 だから今日は、あなたに謝りに来たんです。


 ごめんなさい。

 お兄ちゃんの力を借ります。


 でもきっと、いつかまた、お兄ちゃんは帰ってきます。

 そして、ここでまた、嬉しそうに昔ばなしをします。


 ええ、絶対です。

 約束します。


 だって、お兄ちゃんは――


 マジでパネェ、バッキバキのヤンキーですもの。

 

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ