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ヤンキーが語る昔ばなしシリーズ  作者: 山田マイク
『ヤンキー昔ばなし』
33/40

41 『山のけんか』


 昔々のことよ。


 あるところによ、大きな山が二つあったのよ。

 一つは八ヶ岳って山でよ、もう一つは富士山よ。


 この二人はもともと仲が良かったんだけどよ。

 ある日、「どっちが背が高いか」ってことでもめ始めたわけ。

 

 そこで神様がやってきてよ。

 二つの山のてっぺんに“とい”を作って、真ん中から水を垂らしたのよ。


 するとよ、水は富士山の方に流れて行ったわけ。


 ほら、水ってのは高い方から低い方に流れていくだろ?

 だからよ、神様は「八ヶ岳の方が高い」とジャッジしたの。


 するとよ。

 富士山は怒っちまってよ。

 もう大噴火よ。


 その勢いで八ヶ岳のてっぺんが吹っ飛んじまってよ。

 今のように八つの峰に別れちまって。

 結局、富士山の方がでかくなっちまったのよ。


 以来、二人は仲が悪くてよ。

 今でも、お互いにそっぽ向いてるらしいぜ。


 ……いやよ。

 この話聞くと、ちょっと色々考えちまうのよ。


 実は俺も、“とあること”で今、親友と絶交してんだ。

 あいつとは高校以来、口をきいてねえ。


 あ?

 何があったんだって?


 いやよ。

 それは俺のトラウマっつーかよ。

 ちょっと……触れられたくねえ部分なんだよ。


 え?

 ダイゴらしくない?


 まあよ。

 それくらい、俺にとっちゃ、大事件だったからよ。


 ま、そりゃそうか。

 親友と、訣別した日だもんよ。


 ……今でも忘れねえ。

 あれは、高校の夏休みの時だぜ。


 あの日はそう、とても暑い日だったぜ。


 俺と親友のタカハシはゲーセン行って帰ってたのよ。

 そしたらよ、タカハシが「あちょー」とか言って、冗談で俺の後頭部をたたいたのよ。


 それがちょっと痛くてよ。

 俺も「なにすんだよ」つって、わき腹に軽くパンチ入れたわけ。


 そしたらタハカシ、「なんだよ、冗談だろ」つって、また俺の頭を叩き返してきたのよ。

 今度はさっきより強めでよ。

 かなり痛くて、俺は反射的にまた叩き返したの。


 するとだよ。

 タカハシが「いてーなあ」つってまた俺の背中をバンって叩いてきやがった。

 

 それが段々強くなってきててよ。

 俺はムカついてきてよ。

 こぶしを振り上げたのよ。


 そしたらタカハシの野郎、その手を掴んで、こんなこと言いやがるワケ。 


「おい、ダイゴ、キリがねえからよ、この辺にしとこうぜ」


 俺はマジでムカついたぜ。

 だって、最初に手を出してきたのは向こうなんだぜ?


 俺はよ、


「いやいや、お前の方が一発多く叩いたんだから、最後に一発シバかせろ。それで終わり」


 って言ったのよ。


 そしたらタカハシの野郎、


「ダイゴの方がちょっと強く叩いたんだから、これで引き分けでいいだろ」


 なんて言いやがるわけ。

 俺はマジムカついてよ。


「そんなことはねーよ! さっきの、結構痛かったぜ!」


 つって、怒鳴ったワケ。

 あとはもう水掛け論よ。


「そんなことはねーべ! 俺は50%の力しか出してねー」

「馬鹿野郎! 俺は30%だ」

「へっ、引っかかったな。実は俺は20%なんだが」

「俺の30%は実質10%なんだよこの野郎」

「子供かてめーは! ま、俺は5%なんだけど」


 こんな調子でよ。

 もう路上で言いあいよ。


 それ以来。

 俺とタカハシは一度も口をきいてねえんだ。


 そう。

 あの夏の日。


 俺ぁ……親友を一人失っちまったんだ。

 かけがいのない、友を。

 

         


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